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これから(超高齢社会)の電子政府・電子自治体を考えるシンポジウム

平成22年度情報通信月間参加行事

「先行する韓国の行政改革・日本がめざす国民本位の電子行政」


(2010年6月25日号)
 世界最先端の電子政府国家を形成した韓国。その目的は、あらゆる格差を解消し、国民の安心安全に資する効率的な国家運営のためだった。これからの日本の電子政府・自治体を考える上で本シンポジウムでの紹介は非常に参考になると思われる。電子政府が進化すれば最も恩恵に浴するのは、地域住民であり、とくに高齢者や障害者の利便に供されることは必至であり、今後、日本がめざす国民本位の電子行政のあるべき姿を映し出している。
  以下、東京大学安田講堂で開催された「これから(超高齢社会)の電子政府・電子自治体を考えるシンポジウム」の概要を掲載する。
 
 
 

開会講演

電子行政が創る新しい日本
  • 中央大学研究開発機構 教授 特定非営利活動法人中央コリドー情報通信研究所 理事長
    辻井 重男氏

 情報通信月間ということで、日立製作所、マイクロソフト、中央大学等、いろいろな皆様からご支援いただきましてありがとうございます。タイミングが良かったのが、新たな情報通信戦略というのがつい最近政府から出ました。その1番目に国民本位の電子行政の実現とありますが、これは新たな情報通信技術戦略の中であり、こういうのはもっと大きな国家戦略の全体としてやらなければならないのではないかと思います。ノムヒョン大統領は2003年に国家的な戦略のなかで最重要課題の一つと位置付けて電子政府を進めたと聞いております。
  国連のサイト「UNE-Government Development Knowledge Database」では、今年の192カ国を対象にした電子政府評価、準備度指数で韓国が1位となりました。いろいろな指標をとっての合計点です。電子政府の利便性やインフラ高度化、国民の政府政策参加といった評価項目で、電子政府を構築しただけでなく実生活で上手く活用している国として評価されています。2位アメリカ、3位カナダ、以下ヨーロッパ諸国と続きまして、日本は17位という事になっております。
  こういうので点数をつけていいのかな、と思います。要するに、各項目でこれが問題だということで合計点を取ったものです。どうも電子政府というのは電子行政を進める上で、個別最適化を下から積み上げていってもなかなかゴールに達しない。最初にまずゴール(全体最適化)の構想を定めて、それからゴールに着くために何をやるかというのでなくてはいけないのではないかと思います。ばらばらにして点数つけるのも意義があるのでしょうけれども、相対的には総合的な設計というのが必要ではないのかと思います。
  女優の有馬稲子さんが先月ずっと日本経済新聞で「私の履歴書」を書かれていて、なかなか面白かったのですが、その中で「音楽というものは部分部分をいくら正確に演奏できても、全体の流れが生まれないと聴くに堪えない。私の三味線は、どうもその流れというものがないらしいのだ」とあります。謙遜かもしれませんが、日本の電子行政はどうもそういう感じがいたします。
  哲学者のヘーゲルは、教養とは、「個別から普遍に至る精神のダイナミズム」の重要性を説いています。教養はこれでいいかも分からないけれども、電子行政は逆に普遍から個別に至らなくてはいけない。
  いままで電子政府が進まなかった理由はいろいろあると思うのですが、一部の文化人が割りと観念的な議論をしてると思います。文型理系の問題ではなく、観念の世界に偏ってしまい、経済とか技術の現実というものをどれくらい理解しておられるか、また、その人たちが社会的影響力が大きいということが問題です。戦争中に戦争に協力するような理論武装をした大哲学者、大文芸評論家などを調べてみますと、結局、経済や科学技術を通した現実というものがあまり分かっていなかったのではないかと思います。これと電子行政が二重写しに見えます。
  具体的に言いますと、韓国では公的個人認証制度の利用が昨年は1120万件、国民の約半数に普及しています。日本ではe-Taxを中心に百数十万に届く程度です。公的個人認証制度が非効率だという主張も聞かれますが、韓国を見ても国民的基盤として普及させるべきことだと分かります。ただ電子行政の全体最適化の中でこそ有効性が発揮される制度でありまして、日本の公的個人認証制度の中身は署名であって認証ではないので、災害時など用途拡大に向けて法律改正や官民連携の推進、利用媒体の拡大などを進める必要があります。
  情報セキュリティの理念については、利便性、効率性の向上など自由の拡大、安全性の向上、プライバシーの保護という互いに相反しがちな3つの価値を、単にバランスを取るだけでなく可能な限り高度に均衡させること、3つの止揚で三止揚と呼んでいます。プライバシーの保護、安全性の不安では、年金、医療、介護、福祉、災害での自分の情報を自分でコントロールする、行政がきちんとやってることを確認する自己情報管理が重要になっています。プライバシーの侵害では国民と行政の信頼関係の改善、監視のための第三者機関の設置、デジタルフォレンジクの普及などの対策も必要です。
  なぜ韓国が世界のトップに躍進したのかというと、(1)歴史的経緯による国民共通番号の普及。これは北朝鮮との緊張関係からというより、さらに遡り朝鮮総督府時代の日本の植民地時代からのもので、現在では性別・生年月日など13桁の住民登録番号が18歳になると付与されています。(2)1997年の経済危機。キムデジュン大統領時代、IMFから各自治体の財政状況を出すよう要請されても、データが不統一でかなり苦労したことがインセンティブになっています。(3)大統領制とノムヒョン大統領のIT志向。インフラの全体最適化は、ある程度、独裁的に進めないと難しいところ、韓国の大統領の人事権は各省トップから課長クラスにまで及び、さらにノムヒョン大統領がIT好きだったことも電子行政の展開に幸いしました。(4)人間の本性に根ざした巧妙な手法-利便性と経済的インセンティブの付与。たとえばレストランと税務署がネットで結ばれ、客は領収書を税務署に提出すると最大3割の控除がある等のシステムが商業全般に普及しています。(5)上昇機運と精神構造。韓国は上昇機運の中で、タイミングよく電子化を進めることが出来ました。
  電子行政は学問的見地から総合化学の1つと捉えるとともに、現代人に求められる教養、人材育成についても考えさせられる広い課題です。これについては、情報処理学会50周年特集号「電子行政、総合化学、現代社会と教養、人材育成-情報セキュリティ視点からの起承転結-」VOL.50,NO.5,2010年5月号を参照いただければ幸いです。

   
 

見える化・オープンガバメントの電子政府を

  • 総務省副大臣 内藤 正光氏

 本日はお招きをいただきましてありがとうございます。この安田講堂は入るのは初めてです。昭和57年より6年間、東大で勉強しましたが、当時は内部が荒れ果てた状態で使われていませんでした。 その後改装され、このような場に立てて非常に光栄です。さて我が国のICT化の推進、電子行政の推進で何が問題なのかと問われたら、一言でこう言い表すことができます。「政治が本来果たすべき役割を果たせてこなかったこと」これに尽きるのだと思います。ご存知の通り、IT戦略本部のもとで、これまで何度も何度もIT化に向けたすばらしいアイデアが上申されてきました。総理大臣をはじめ関係閣僚はそれを受けてきました。ところが、受取る我々政府・政治家のほうがしっかりと役割を果たしてこなかったために、結局は省庁の縦割りの溝の中に落ち込んでしまって、すばらしい案も結局は何も日の目を見ない。この繰り返しではなかったでしょうか。
  そこで新しい政権のもとで、まず最初にやり遂げることは何なのか。当時、IT戦略担当の大臣でありました菅副総理から相談を受けて、それはやはり政治主導体制、旗振り役がしっかりと作り上げることが大事ですよと申し上げて、まずやったのはIT戦略本部の体制を政治主導へと切り換えることでした。
  いままでのIT戦略本部体制は総理大臣以下閣僚が並ぶ本部というのがあり、その下に専門家の方たちから構成される専門調査会があった。そこから上申される案を40分から45分間の時間で報告をされ、「総理、ご異議ありませんか」「異議なし」という形でした。こんなことを繰り返していたら、どんなにすばらしい案もしっかりと政府の案、内閣の案には成り得ないのです。
  そこで何をやったかというと、IT戦略本部の下には大臣級だと重いものになってしまうので、我々のような副大臣級の会議を省庁横断的に作りました。かなり頻繁に副大臣級の会議を開きながら、議論をするような体制になった。その政治主導体制へ切り換えて、IT戦略本部の案を作り上げて、それが5月11日にまとまったわけです。今回の新政権下の新しいIT戦略というものは、これまでにない省庁横断的な戦略が出てきたものと、私は自信を持って皆様方に申し上げさせていただきたいと思います。
  3つの大きな柱から構成されています。(1)国民本位の電子行政の実現。(2)地域の絆の再生。光ファイバーが敷設されているので、経費もかからず簡単に銀座の医師が遠隔地の岩手県遠野市の診察しています。実際に現地を見ましたが、健康意識が高まり、予防医療にすばらしい効果が出ています。こういったことを通じて地域の絆を再生していく。(3)新市場の創出と国際展開。本日は電子政府ですので、電子行政の実現についてお話すると、3つのキーワードがあります。
  (1)行政刷新。(2)見える化。(3)オープンガバメント。この3つのキーワードをもとに電子行政をガンガン推進していこうと考えております。そのインフラとして国民ID制度を導入していく。そういったときに多くの国民から懸念の声が出る。政府は私たちを監視するつもりなのか。私たちをしばりつけるのか。こういったことがあって、電子行政を進める上で本来なくてはならないIDというものを導入することがなかなか出来ません。
  しかし、私たちは発想を大胆に変換させていただきます。政府は決して国民を監視するためにIDを導入するのではありません。電子政府を導入するのではありません。韓国の民間制度がそうであるように、国民が政府の働きをチェックするためのインフラなんです。そのためにこそ電子政府を実現していくのです。いまのままでは一般の国民が政府や政治家のパフォーマンスをなかなかチェックできない。ICTという力を使うならば、誰もが簡単に情報を入手できるはずなのです。ところが残念ながら悲しいかな我が国はそういったものをオープンしていない。そこで我々は予算の進行やパフォーマンスを数値目標を作って、誰もが皆、簡単に入手できるオープンガバメント、見える化を推進していく。国民のために税金の無駄遣いを許さず、政府のパフォーマンスをあげていく。そういう電子政府を推進していきます。
  以前までの自治体は3300ありました。それぞれが電子化、電子自治体に取り組んでいます。ところがそれぞれが個別のシステムで、個別にメンテナンスしています。それぞれに人が必要になっています。莫大なお金がかかってしまいます。それでいて、それぞれのシステムが繋がらないので、本来ICTがもたらすであろう利点、恩恵がなかなか受けられないでいます。お金がかかっても実効性を発揮できないでいます。そういった地方自治体の電子化がこれまで続いてきました。そこで私たちは、すべての自治体に個別のシステムを置くのをやめようじゃないかと。いま光インフラがありとあらゆる場所にまで整備されている。だったらクラウドコンピューティングでそれを使おうじゃないか。しかも今1800の自治体がどういう情報、どういうデータを持ったらいいかは国の法律で決まっています。だからすべての自治体は同じ1つのシステムでいいのです。
  では、なぜ違うソフトが必要なのか。聞いてみると些細なことなんです。表示の順番をこの順番に変えてくれとか、こういったものは慣れの問題で、1つに決めればそろうんです。地方分権の時代に押し付けることはできませんが、既存のシステムからクラウドコンピューティングに変えたら、運営コストも2分の1、3分の1に下がるんです。ところが、いま自治体がICTのコストを半分や3分の1に下げたら、国からもらう地方交付税も下がってしまう。ですからインセンティブが全くないんです。ですから、導入したらその分の地方交付税は変えませんから、浮いた分は他に使ってくださいという導入支援策を考えながら、クラウドコンピューティングによる安価な導入を推進していきたいと考えています。

   
 
 
 

国民に温かく、便利な韓国の電子行政サービス

  • イーコーポレーションドットジェーピー 代表 廉 宗淳氏

 弊社の社名はイーコーポレーションドットジェーピーといいます。イーコーポレーションとは、ITを上手く使いこなす会社という意味です。最後にドットジェーピーをつけたのは、日本をイーコーポレーション化したいという意味でつけました。今までの仕事を抜本的に変えるというのが仕事でして、電子行政、教育情報化、医療等、いろいろな分野での今までの常識をひっくり返すような技術モデルを作るというのが仕事です。いままでの既得権を持つ皆さんと常に戦うことになっております。
  いま自治体の現場に近いお話が出来るのは、兼青森市役所の職員であり、兼佐賀県庁の職員であり、イーコーポレーションドットジェーピーの代表であり、今年から学生にもなりましたし、あらゆる分野でエンドユーザとして提供する側でなく消費する側での経験をもとに話をしたいと思います。
  まず電子政府というのは国全体をまとめて進めていくものなので、非常に大切です。次に病院経営を拝察すると、病院経営がうまくいっていないところは、電子カルテを導入するとますます経営が苦しくなるという現状もあろうかと思います。間違った使い方を直していきたいと思います。3つ目に教育ですが、この国は子供の教育、とくにITを使った教育に投資をしていない気がします。佐賀県庁の職員として、いろいろな教育の現場に入ってみると、IT投資はほとんどなく、先生にパソコンも配っていない。OECD、先進国20カ国の中で先生にパソコンさえ配っていない国は日本以外他にないと思います。おそらく子供たちは有権者ではありませんので、票に結びつかないのでこうなっているのではないかと思います。だから早く、選挙できる年齢を小学生まで引き下げるということでしょうか。
  さて、客観的に見れば韓国は皆さんの国より大分遅れた国です。当然、皆さんが学んできた国はアメリカをはじめ欧米だったでしょう。なぜ韓国なのかというと、学校の制度等もろもろの社会制度のほとんどが日本から入ってきています。住民登録、印鑑登録、不動産登録、6:3:3:4の学制、年末調整、国民年金、国民医療保険、雇用保険、労災保険のある国。印鑑証明書は全世界で日本と韓国と台湾しかありません。なぜかというと2つの国は皆さんが植民地にしていた国だからです。そういった国が皆さんと同じような制度、似たような法律でイノベーションを起こしましたので、なおさら参考になります。
  ノムヒョン大統領が作った行政サービスの5段階がありまして、電子政府を分かりやすく、我々が住民票を発行して貰ったときのサービスをもって説明します。私の小学校の頃は、役所に行って住民票を取りに行くと、住所を書いて出します。すると裏の倉庫みたいなところの本棚からぶ厚い紙に「住民票」と書いてある中から私のを探し出して持ってきて印鑑を押して渡してくれました。これが1段階の行政サービスです。2段階になりますと、やっとパソコンが役所の中に入ります。データを全部打ち込んで、プリンターから出力されます。3段階では、自動交付というものができまして、役所の内外、この頃日本ではコンビニでも取れます。機械を通じての証明書の交付になります。4段階では、自宅で自分のコンピュータから住民票を申請し出力するものです。5段階になると、役所の証明書は大抵は役所に提出するので、役所のコンピュータを裏でつなげればいいというものです。韓国は5段階サービスに来ております。日本は3段階まで来ています。よく電子政府、電子自治体に対する定義が定かでなく、電子政府の行政業務の電算化はどこが違うのか、考えた事はありませんか。電子政府といいながら今までやってきたこととあまり変わらないと思う方もおられるとい思いますが、役所の業務を楽にすることまでが行政上の電算化であり、電子政府というのは市民、国民が利便性を感じることです。ですから、自動交付機が役所の中にあるのは、一切、電子自治体サービスではなくて、役所の公務員を楽にしているだけだと私は思っています。役所の中ではなくて役所の外に出していただきたい。役所にわざわざ捜しに行ったのに人間が相手にしてくれず機械にまわされて、せめて手数料が安く済めばいいのに、手数料もそれほど安くしてくれないという情況ではないかと思います。
  いま韓国では電子政府法というのが3年程前に整備されまして、「国民に証明書などを提出させてはならない」ということになり、役所はプロセスを全部変えました。また、行政は情報を共同利用しなければならないので、住民票をコピーで出せますとか、自宅で出力できますとかいうレベルの話ではなくて、そもそも証明書そのものをなくしてしまえば、公務員の仕事も大分減るし、国民も 元気になるのではありませんか。環境に優しいとかよく言いますが、そもそも紙を使わなければもっと優しいのではありませんか。

   
 
 
 

減税しても税収が増える!韓国のe-Tax

  • 大韓民国国税庁 電算情報管理官室 電算企画課長 劉 在哲氏

 私は劉在哲と申します。韓国の国税庁の電算企画課長です。韓国が世界の電子政府の順番で1番になったということでしたが、その事実は分かりませんでした。ただ、国税庁の電子サービスが韓国の各部署の中では規模とか内容で1番だと全国民が信じているのはよく分かっています。いまから韓国の国税庁が納税者のために開発した様々なインターネットサービスについて説明します。
  まずは国税庁インターネットサービスの沿革について話します。韓国の国税庁の根本である国税統合システム(TIS)はすべての課税資料を管理するため1997年に構築されました。2002年には最初のインターネットサービスとしてホームタックス(Home-Tax)を開設しました。2005年には現金領収書システム、2006年には年末調整手続きの簡素化、2009年には勤労者奨励の所得税申告が簡単に出来るように税制を作りました。その後でも2010年電子税金計算書等、国民へのいろいろなサービスのシステムが作られました。
  続いてホームタックスの領収書、年末調整システム、法律情報システムについて説明します。まずホームタックスの推進背景について話しますと、納税者は税金申告のために税務署に行かなくてはならない不便がありました。国税庁に対して良質なサービスを求める声も大きくなりました。一方、国税庁は業務量が毎年急速に増えて行政的承認に無理がありました。
  そして政府は国民に対して世界最高のサービスを提供するほか、税務行政の効率性を高めるために、大統領がホームタックスの構築を重点的に推進することを重要課題として選んで、本格的にホームタックスの導入を開始しました。
  つぎにホームタックスの改善のために国税庁が推進してきたのは、2002年にはホームタックスを最初にオープンしました。日本の消費税に似ている付加価値税、源泉徴収など、簡単な税務に対して電子申告、電子告知、電信納付などができるように構築しました。2004年には法人税、所得税など複雑な税務の電子申告などのほか、33種類の証明書の発行もインターネットで発行できるようにホームたっくすの範囲を広げました。2006年には税金の申告や納付について、納税者が詳しい内容を照会できるサービスを実施しました。2007年には国税に次いで地方税もホームタックスで納付できるように改善しました。2008年にはクレジットカードを使って、税金の納付ができるようになりました。
  2009年にはホームタックス相談専用センターを開設し、現在30名の専門要員がいます。
  ホームタックスの歩みについて詳しく説明します。ホームタックスは原則で公的個人認証書を利用して管理します。しかし税金申告期間に限り、公的個人認証書のない納税者のために国税庁は臨時に管理番号を発行します。
  電子申告は1種類の税務に対して2つの方法で利用できます。税務会計プログラムを使って作成した申告書をホームタックスを通じて送る方法と、納税者がホームタックスで申告書を作成して電送する方法があります。
  電子民願は、日本では使わない用語です。韓国では国民が政府に対して何か要求することを意味します。全109種類の民願証明に対してはホームタックスを通じて受け付けています。事業者登録など35種類の証明書に対しては、ホームタックスから出力して公的文書として使われています。41種類の民願証明に対してはホームタックス画面に処理過程を詳しく公開しています。
  電子告知では納税者に電子メール、携帯メールで有無を告知され、納税者はホームタックス画面で税金告知の詳細を紹介できます。ホームタックスの加入者は2004年の170万人から2009年には10倍の1120万人となっています。
  電子申告の場合には2009年末で法人所得税の96%、消費税申告件数の74%、総合所得申告件数の80%がホームタックスの利用となっています。
民願証明では全体1200万件のうち77%、内容は事業者登録証明の89%、滞納税額証明の75%、納付内訳証明の84%となっています。
  納税者はホームタックスの利用で時間と交通費を節減できます。これを金銭的に換算すると、およそ300億円以上の費用を削減できる効果が期待できます。同様に国税庁の時間、紙等の節減額は毎年100億円以上の効果が期待されています。となります。
  ホームタックス導入について、韓国政府がどのように努力したかというと、まず、納税者に対しては税額控除のインセンティブを与え、消費税申告時の控除額を1万ウォン、所得税・法人税の申告時の税額控除を2万ウォンとしました。このほか、法人・個人の税務代理人へのインセンティブ、税務署へのインセンティブ、納税者の利便性向上のためのITを活用した住民サービスを徹底しています。
  以上、韓国国税庁のインターネットサービスについてご紹介しました。

   
 
 

国民本位の電子行政をめざす新たな情報通信技術戦略

  • 内閣官房 IT担当室 小宮 義則氏

 私は内閣官房の副長官補付という官房長官直属の部隊にいます。そのなかで主にITを見ている参事官です。本日の講演では2つばかり印象的でして、私は本学の出身であり、在学中、安田講堂は物置場に使っていて、健康診断のときポリバケツが積み上げてあったのを覚えています。また、今日は韓国の方々がいろいろと発表されていますが、98年から01年までソウルの日本大使館におりまして、韓国の方々と今でも何人かとお付き合いがあります。野田聖子IT担当大臣のときに韓国に電子行政の視察に参りましてそういう意味でも今日のシンポジウムは印象的です。
  新政権になりまして新たな戦略を作ろうということになり、今年の3月19日に骨子案を了承して、5月11日に新たな情報通信技術戦略を策定しました。IT政策というのが広がりがある関係から各省連携してやっていこうというのがベースになっています。重点計画を作る本部があり、内閣総理大臣が本部長、IT担当大臣、官房長官、総務大臣、経済産業大臣が副本部長になっています。他の全閣僚、ITに詳しい各界の有識者によって構成されています。新戦略の背景は、日本のIT力は2005年にはブロードバンドの整備によって8位まで順位が上がったのですが、なかなか利活用が進まずに今は21位に低迷しているわけです。韓国は15位ということで、2〜3年前には韓国にも抜かれています。シンガポール、アメリカといった所が上位に来ています。日本の基盤はどうなのかといいますと、ブロードバンドは世界一の水準ですし、基盤関係は非常に順位が高くなっています。逆にいうと利活用がうまくいっていないということになります。
  もうひとつの動きとして、ここ2〜3年、韓国も含め主要先進国が次々と新しいIT戦略を打ち出す状況にあり、たとえばアメリカのようにブロードバンドが日本より劣っていたところがインフラの整備を図っていこう。それも単に線を敷くだけでなく、デジタル図書館等と結びつけていく戦略。イギリス、フランスのように競争力の強化という観点で、インフラの整備と利活用を一緒に図っていこうというものがあります。これはEU全体としても同じだと思います。このような新しい戦略が各国で出てきています。
  今日の主題の電子政府にしても各国いろいろな形で電子政府の取り組みがなされているわけです。電子政府では何らかのIT的なことが必要なのは当然でして、ITの作り方はそれぞれ歴史的な違いがありますが、それをベースに電子政府、とくにデータの連携を中心に取り組んでいるのが実情です。
  韓国の場合はIT化の前から住民登録番号がありましたので、ここをベースにできたわけですが、日本では1から作っていく必要があるというところがイシュー(焦点)だと思います。
  政府CIOですが、国によって若干意味合いが違っているように思われます。アメリカの場合には企業のCIOを考えていただければいいと思いますが、情報化投資を効率的に推進していく上でのCIOです。企業のCIOは社長の統率の下に組織の情報の流れ方をIT投資と一緒に考えていく、イーエンジニアリングを推進する役目のCIOです。カナダ以降、他の国のCIOは、IT戦略のとりまとめを行っているような面もあり、政府のCIOも国によって様々であろうと思われます。 
  医療の状態ですが、診療所ベースのプライマリーケア、つまり最初にお医者さんにかかる電子サービスが日本では非常に遅れております。イギリス、オランダ、オーストラリア、ニュージーランドでは電子カルテの利用率が高く、ホームドクターが電子的にカルテを整理・保存しているということで、すぐに患者の状態に対応できるとなっています。日本の場合では最初は開業医にかかることが多いのですが、開業医を中心に電子化への理解が得にくかったという状況です。医療をめぐる環境にしても、日本の場合、医療部署の負担が多く、また、EHR(イークリックヘルスレコード)、個々の患者の医療健康情報を管理をする仕組みについても、イギリス、フランス、アメリカ、韓国より導入が遅れ、これからの対応となっており、このあたりをどうするかが課題だと思います。
  ITと地球環境問題では、スマートグリッドの話ですが、スマートグリッドはエネルギー技術とITの融合ということですが、太陽電池とか電気自動車といういろいろな形でやっていこということで、地球温暖化の関係で需要と供給のネットワークの中で、需要のほうでスマートメータなどを設置し、きめ細かく見ていかないとキャパシティが一時的に足りなくなるということが考えられています。まさにエネルギーのマネージメントをITでやっていくということです。アメリカをはじめヨーロッパ、中国も含め世界中がスマートグリッドの導入に向けて走り出しているので、日本においても日本版のスマートグリッドをやらなければいけない情況にあります。
  次にグリーンITとしてのITS(交通管理の最適化)ですが、今後はCO2削減対策としてもITSが重要となっています。というのもCO2排出量の約2割が運輸部門であり、端的に言うと交通渋滞を減らすことがCO2削減につながるということになります。
  新たなICT戦略の重点施策としては、第1に「国民主権」の観点から、政府内で情報通信技術革命を徹底し、国民本位の電子行政を実現。第2に、情報技術の徹底的な利活用により地域の絆を再生。第3に新市場の創出と国際展開。となっています。
  国民本位の電子行政を実現には、自己情報の監視が重要になってきます。自分の情報に対する不正アクセスを監視していくことですが、個人情報を確保し府省・地方自治体間のデータ連携を可能とし、電子行政の共通基盤として2013年までに年金や保険、医療、教育、納税などのいろいろな番号をひも付きにして、国民IDを導入いたします。これにより行政からのプッシュ型の情報発信、手続きのワンストップサービス、データ保有機関のデータ連携、官民の相互連携サービスが可能となります。

   
 
 

これからの電子自治体

  • 総務省 地域力創造グループ 地域情報政策室長 高地 圭輔氏

 本日はこのような機会を得て誠に光栄でございます。私は旧郵政省の入省で、自治体関係の業務は初めてですが、中立的にものが言える一方で、自治体の業務に通暁しているものではないのでご了承下さい。
  まず電子自治体の現状と課題をまとめています。業務の電子化につきましてはコンピュータが現場に入っておりますので、かなり進んできている部分もありますが、住民の目線から見た場合の利便性の向上等の問題も起こっています。電子政府を含めた電子自治体ではオンライン利用率の低迷の問題があろうかと思います。従いましてオンラインサービスを利用しやすくする努力がまだまだ必要であろうかと思います。また認証基盤の整備もまだまだ取り組まなければならないと思います。
  次に、コストの圧縮というのが大きなテーマになってきております。実際に財政状況が厳しいという状況であり、どこへいっても使えるものは壊れるまで長く使うという取り組みをしております。そうした中で新しい話が出てくる。今回のIT戦略はその典型かと思うのですが、コストの圧縮に取り組みながらやらなければならない。口で言うのは簡単なのですが、非常に厳しい状況にあります。
  情報セキュリティの確保としては、情報漏洩ではヒューマンエラーのカバンを忘れてしまったということから、年明けに話題になったガンブラーというコンピュータウイルスの感染事故まで、さまざまなパターンがあります。自治体の方でも事故を防ぐポリシーは整理されてきていますが、運用に関してはまだ整理されていないということで、引き続き運用の徹底を図る必要があると思います。
  現在のIT戦略の目標としては2010年度までに、自治体に関しましては21の手続きについてオンライン利用率を50%以上にする。図書館の貸し出し予約とかスポーツ施設の予約等、比較的なじみのあるものから、こんなものがオンライン化されているのかというものまで入っていると、私自身は感じています。全体を均してみると2008年で27.8%ということです。住民票を窓口で取ることから、窓口に行かなくても済む。オンラインの申請についても、今年に入ってから費用対効果の点で使われていなかったり止まったりしている物もあります。こういったものでも21手続きの枠内であったりしますので、21の手続きは本当に吟味されているのか、というのが現在の問題意識です。
  もう少し詳しく見てオンライン利用率とオンライン化率を分類しますと、オンライン利用率の高いものは先程の図書館の貸し出し予約とかスポーツ施設の予約等がこれにあたります。入札関係の手続きはオンライン化されれば比較的業務がダウンフォールされることもあり積極的に使われるインセンティブもあります。オンライン化されても利用率の低いものは、地方税の申告、自動車税の住所変更届等の手続きがこれにあたります。こういったものはまだまだ使いやすくしなければならないというのが課題だと思っております。さらにオンライン化されていないものは、今後見直しが必要になってきます。
  今回新たなIT戦略で、2010年度中に新たなオンライン化計画を策定すると示されておりますので、私どもとしてもより選択と集中という考え方で、利便性や効率性という価値に貢献するようなオンライン利用を進めるべきではなかろうかというこです。
  私どもは平成21年度の補正予算をいただきまして、オンライン申請サポート事業というものを規模としては2万8000名ということで22年の2月1日から3月15日まで、開催しました。アンケート調査などを行いました。受講して良かったかという質問には95%以上が良かったと答えをいただきました。年齢が上がれば上がるほどパソコン操作が難しいと感じるという極めて単純な結果が出ていまして、やはりまだまだ国民とくに高齢者のITリテラシーの向上が必要であると考えています。
  新IT戦略が5月に出て私どもも政府の一員として、この戦略に基づき施策を講じていく立場にあります。自治体の関連におきましては、キオスク端末を通じたサービスであるとか、国民IDの関係とか利用率の高い印鑑照合等の入手を民間との連携でオンライン化するなどが住民の利便性に関わるところです。今後取り組む上で、考えていかなければならないことがいくつかあり、浜口総務大臣が浜口5原則を公表しています。国民の権利を守るための番号であること、国と地方が効率的に協力していくことなどを示しています。こういった考えを踏まえながらIDを実現していくことに取り組みます。
  IDにつきましては電子自治体においても非常にメリットがあると認識しておりまして、IDの異なる機関間で相互に利用し、現在は自治体間でデータの連携を手探りで行っているものを照合できます。自治体の内部では住民の各種のデータは連携できるように整っていますが、厚生労働省とか国税庁とか国の機関の個別のIDとの連携が問題になっていると認識しております。国民IDを使った場合、利便性については、窓口を何個も回る必要がなくなり、1ヵ所で照合でき、必要なデータを引っ張ってこられるということです。また健康、防災の分野でで新しい住民サービスがでてくると期待されています。このなかで個人情報の保護、全体のルールが必要になり、自治体の中でのマネージメントが重要になってきます。具体的な例として大型地震の際、庁社内で持っている様々な情報を接合して被害者台帳を作るという使い方が出来ると思っております。
  こういうIDを使っての全国展開では、自治体側のお金を始めとした資源が足りないと認識しております。自治体の数が約1800ですが、そのうち1500が小規模です。こういったところではIDの担当者が1人という例もあり、数名いてもお金が渇々です。一方で政令都市や50万人の人口があるところでは、相対的には資源があります。これまでは自分の領域の住民を見ていたのですが、今後利便性の高いサービスを考えていく上では、どこかで集約的に行って現場窓口で提供するというような、サービス提供をどうやって行っていくかを真剣に検討していかなくてはならないと考えています。また、都道府県と手を携えて小規模な自治体を支援していきたいと考えています。


 
 

 引き続き、電子政府への期待・本音の要望をフラッシュトークとして、「在宅介護歴18年目の団塊世代の立場から」老テク研究会・大島眞理子氏、「仕事と子育てにがんばる若い世代の立場から」東京大学・岡耕平氏、「ひとり暮らし高齢世代の立場から」メロウ倶楽部・若宮正子氏が壇上で発言した。 
 さらにパネル討論では、「これからの日本の電子政府・自治体を考える」と題し、IT戦略本部電子政府評価委員会座長・須藤修東京大学大学院情報学環教授のモデレーターにより、以下のパネリストにより討論された。

  • 日本電信電話 代表取締役副社長 宇治 則孝氏
  • 衆議院議員 財務金 融委員会 岸本 周平氏
  • 日本経済新聞社 産業部編集委員兼論説委員 関口 和一氏
  • 神奈川県議会議員 松崎 淳氏
  • イーコーポレーションドットジェーピー 代表 廉 宗淳氏

 最後に特定非営利活動法人中央コリドー情報通信研究所事務局長・北村彰啓氏により閉会挨拶があり、熱の入ったシンポジウムの幕を閉じた。