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「テロ対策のための研究開発」成果発表会(2月開催時)

「テロ対策のための研究開発」成果発表会(2月開催時)

日本防犯設備協会 防犯照明委員会 副委員長 かがつう 取締役照明本部 本部長 乗木 俊毅氏

 

(2010年4月10日号)

【開会の辞】 

  • 総合科学技術会議 有識者議員 奥村 直樹氏

 ただいまご紹介をいただきました奥村直樹でございます。本日の成果発表会に際しまして一言ご挨拶させていただきます。年度末のお忙しい中、足を運んでいただきましてありがとうございます。今日お集まりの先生方には、長年のご尽力に対して感謝を申し上げます。世界各地で無差別犯罪やテロなどが発生しており、2001年にアメリカで起こってから、イギリス、インドネシアやスペインでも発生しております。アメリカの政府の発表によりますと非戦闘員がテロに巻き込まれて1年で1万人という大変な数の方が命を絶たれているということです。こういった状況のもと、アメリカを始め各国がテロの未然防止のために努力しており、新たな科学技術を研究開発し続けております。 注目を浴びているのは飛行機の全身スキャンであり、テロ未然防止への技術の貢献度は高いと思われます。その他危険物の探知やテロ行為の事前対処など国民の安全・安心を確保し、世界一安全な国の実現を政策目標に掲げて犯罪を未然に防ぐために力を注いできたわけです。総合科学技術会議においても各研究開発を後押しする意味で最新の技術動向や政府の取り組み状況について、その成果を発表いたします。私も大変期待しております。ご出席の皆様にはご意見ご感想をお聞きし、さらにより良きものにしていきたいと考えております。有意義なシンポジウムになりますようご協力をお願いして簡単ではありますが開会のご挨拶とさせていただきます。

 
 

【基調講演】「日本の安全技術基盤を考える」

  • 同志社大学大学院 ビジネス研究科長 教授 村山 裕三氏

 まず、技術力と安全保障の関係をみますと、通常の国は技術力、経済力の向上を安全保障へ結びつけています。国力の向上に結びつける経済安全保障という考え方です。安全技術基盤で具体的な安全保障を行うということです。冷戦期の米国では、技術力が対ソ戦略の切り札でした。現在の中国では、経済・技術力が向上し、この経済安全保障の意味合いは強まり、中国は安全保障とは何なのか考え始めています。経済安全保障政策では、どういう技術基盤を構築しているかといいますと、中国は1998年から1999年に戦略を転換しました。航空宇宙、ミサイル、有人宇宙飛行、電子分野等に集中投資し、サイバーテロにも対応しています。2つ目が軍民統合により技術基盤を構築し、さらには海外からの技術基盤の導入も挙げられます。
  日本の防衛技術基盤はアメリカの体系の中での防衛力整備であり、アメリカは世界ナンバー1の軍事技術基盤を持ち、民間技術の軍事への組み入れメカニズムがあり、国土安全保障技術へ注力しています。防衛技術力のキャッチアップと国産化、防衛ファミリー体制とライセンス生産、武器輸出三原則などの制約等があり、技術基盤についての独自の発想は難しいものでした。テロ対策技術の意味を考えると、安全保障環境は冷戦が終わり9.11テロにより変化しました。技術環境の最先端は軍から民への環境変化によって日本の両用技術の価値が高まり、部品、要素技術での強み、民生に使う技術、生産技術での強みが安全技術基盤としてのテロ対策技術開発につながり、自由な技術基盤構想が可能になっています。
  日本のテロ対策技術開発の始まりは、2003年2月に未来工学研究所が「社会の安全において科学技術の果たすべき役割に関する調査検討」を国内で初めて行い、2003年4月にも文部科学省が「安全・安心な社会の構築に資する科学技術政策に関する懇談会」を開催し、総合科学技術会議では「安心・安全に関する常勤議員の勉強会」を設け、2004年12月には総合科学技術会議で「安全に資する科学技術推進プロジェクトチーム」が発足しました。経済安全保障を通じて安全のことを考えようとする考え方に進展がありました。2005年4月の「安全PT」の中間報告では、まず総合的な安全保障への貢献。次に我が国の国際的な地位向上への貢献。3つ目は、国の持続的な発展基盤としての推進です。2006年3月に第3期科学技術基本計画が策定され、これが展開すれば「安全が誇りとなる国:世界一の安全な国・日本の実現」となり、その分野別推進戦略として「デュアルユース技術の活用」という先程の両用技術が取り上げられています。 
  いままで7年の蓄積として、内閣府、国交省、警察庁など、20以上のテロ対策プロジェクトを実施しており、技術基盤構築に向け真剣な取り組みが行われました。ところが、昨年8月9月から突然連絡がなくなりました。ご存知の政権交代です。ここまで一生懸命やったのはいったいどうなったのか、不安な日々を送っていたのですが、12月に発表会の連絡があり、正直うれしかったです。しっかりと継続されているということです。2010年1月には文科省が「安全・安心な社会のための犯罪・テロ対策技術等を実用化するプロジェクト」の公募を行い、今後5年間は継続していきます。研究開発体制の進展として府省庁間の連携と実用化をめざしたプロジェクトが推進されています。
  日本の安全技術基盤の趨勢をみますと、まず防衛技術の弱体化が挙げられます。世界的トレンドから取り残され、防衛ファミリーの崩壊から国内でも動きが取れない状態でいます。テロ対策技術が強化され、食品安全や環境安全などの安心関連技術への関心が高まり、日本の技術基盤は軍民両用から民生技術に向かっています。民に近づくことにより民間技術の関与が不可欠になっています。民における安心・安全技術の萌芽としては、東京ガスエンジニアリングの「ボトル検査装置」、ダイキンの「ストリーマー技術」が挙げられますが、企業レベルでは収益化の壁がありますので、政府の役割が重要であり、安全技術基盤を構築することは、国力の向上に結びつけるという意思と戦略と政策が重要となっています。

 
 

【講演】「テロ対策のための研究開発連携施策群の取り組み」

  • (独)科学技術振興機構 技術連携施策群 主監補佐(元警察庁科学警察研究所副所長) 岸 徹氏

 テロ対策のための研究開発の背景をみますと、近年の国際テロはロンドン同時爆破テロ事件2005年7月7日、ロンドン旅客機爆破未遂事件2006年8月9日、インドネシア・バリ島における同時多発テロ事件2005年10月、インド・ムンバイ同時テロ2008年11月26日、アメリカ航空機爆破未遂テロ2009年12月14日、国際テロ情勢が変化しテロ対策に資する科学技術の必要性が生じております。従来技術の問題点を挙げますと、危険物質の多様性として軍用、産業用爆薬から手製爆薬へ移り変わり、化学剤、生物剤から放射性物質、核物質の使用へ変わってきております。また隠匿方法の多様性では、手荷物への隠匿から人自身の所持へと変わってきています。このため、検知スピード、選択性の向上が必要になっています。多数の人を検査するための検査スピードの向上では、例えばウォークスルータイプの検査システムが挙げられます。危険物質の探知技術の開発による安全の確保としては、まず探知原理の異なる新しい技術の導入、さらに既存技術の組み合わせによる新システム、旅客等利用者の許容度も考慮しなければならず、これらにより安全・安心社会の構築を推進していかなければなりません。
  このため、テロ対策のための研究開発連携群の科学技術連携施策群の推進体制として、総合科学技術会議では安心・安全で質の高い生活のできる国の実現に向けての第3期科学技術基本計画に基づき基本政策推進専門調査会が設置され、その中にライフサイエンスPT、情報通信PT、環境PT、ナノテクノロジー・材料PT、社会基盤PTと5つの分野別推進戦略総合PTに分かれています。このうち社会基盤PTがテロ対策のための研究開発、現場探知システムの実現です。平成19年からのテロ対策のための研究開発連携群以前に開始されていた研究 課題より連携施策群の取り組みにより各府省庁実施する関連施策の連携が強化され、研究内容の重複排除により資産の有効活用となり、未対応分野の補完ができるようになりました。
  各省施策及び補完的課題における主な成果は、文部科学省では、安全・安心科学技術プロジェクトとして、ウォークスルー型爆発物探知システム、ミリ波パッシブ撮像装置、生物剤検知システム、液体爆発物検知システムを研究開発し、科学技術振興調整費では化学剤・生物毒素の探知システムを、戦略的創造研究事業のうち先進的統合センシング技術では、生物剤センシングシステム、匂いセンサーを研究開発しています。国土交通省では、交通機関におけるテロ対策強化のための次世代検査技術の研究開発として、ラジオ波による手荷物検査技術の開発、ミリ波による旅客検査技術の開発を行っています。警察庁科学警察研究所では、R(radiological)テロにおけるRN物質探知技術と現場活動支援機材の研究開発、爆発物の現場処理技術に関する研究を行っています。
  補完的課題としては、手荷物中隠蔽核物質探知システムの研究開発があり、空港手荷物のウラン235、プルトニウム239などの核物質、コバルト60等の放射性物質を迅速に探知する研究です。
  これら各省施策の連携として、文部科学省と警察庁は平成19年4月よりテロ・犯罪対策のための研究開発会議を設置し、「国土と社会の安全確保」、「暮らしの安全確保」のために、科学技術の成果の活用を促進し、テロ・犯罪対策に幅広い研究開発の成果を生かす方策を検討しています。具体的な内容は、文部科学省で平成19年度より新たな提案公募型の研究開発事業の「安全・安心科学技術プロジェクト」を開始するなど、研究開発プロジェクトの効果的な推進方策についても両省庁で検討しています。
  連携群の活動における3年間の情報発信を見ますと、平成19年7月には科学技術連携施策群の立ち上げとして「テロ対策のための研究開発-現場探知システムの実現」シンポジウム2007の開催、平成20年7月には関西地区における広報活動としてユーザーを対象としたセミナーを開催、10月には東京でユーザーを対象としたセミナーを開催。平成21年10月には連携国際セミナーを開催し、延べ671名に対し、国の施策、最新の科学技術について情報提供しています。
  延べ数にして、特別講演・基調講演が5題、講演が15題、成果発表講演が6題、パネルディスカッションが2となっています。これによりユーザーへの情報提供と連携の強化と、日本から世界に発信する機材の基盤確立をはかってきました。

佐藤 弘康氏
「ミリ波パッシブ撮像装置」
坂入 実氏
「ウォークスルー型爆発物探知システム」
春山 満夫氏
「手荷物中隠匿核物質探知システム」

【国の支援による研究開発成果の紹介】

  • 東北大学大学院/日立製作所/(独)日本原子力研究開発機構
○「ミリ波パッシブ撮像装置」

 東北大学大学院 工学研究科 電気・通信工学専攻 助教 佐藤 弘康氏

○「ウォークスルー型爆発物探知システム」

 日立製作所 中央研究所 主管研究長 坂入 実氏

○ 「手荷物中隠匿核物質探知システム」

 (独)日本原子力研究開発機構 原子力エネルギー基盤連携センター 超高感度U・Pu非破壊検出法開発特別グループリーダー  春山 満夫氏

 国の支援による研究開発成果の紹介では「ミリ波パッシブ撮像装置」については、東北大学大学院工学研究科電気・通信工学専攻助教 佐藤弘康氏が発表し、装置の高分解能・リアルタイムで撮影が可能なことに加え、画像処理により不審物のマーキングシステムを搭載でき、国産・量産・低コストの運用が可能となる優位性が伝えられた。「ウォークスルー型爆発物探知システム」では日立製作所中央研究所主管研究長 坂入実氏より、平成21年度からの実証実験を通じ駅や空港での早期実用化のほか、数種の爆薬の検出方法の検討等が発表された。「手荷物中隠匿核物質探知システム」については、(独)日本原子力研究開発機構原子力エネルギー基盤連携センター 超高感度U・Pu非破壊検出法開発特別グループリーダー 春山満夫氏により、高速中性子を用いた核物質探知に関する研究(日本原子力開発機構)、擬似2色X線を用いた高精度DR測定に関する研究(東京大学)、複合放射性物質探知システムに関する研究(IHI)が発表された。

中村 順氏
天野 久徳氏
竹内 英氏
安藤 昇氏
 

【説明&パネルディスカッション「関係省庁の取り組み」】

  • 内閣府/警察庁/総務省消防庁/文部科学省

<モデレータ>

  • 内閣府 政策統括官(科学技術政策・イノベーション担当)付参事官(社会基盤・フロンティア分野担当) 廣木 謙三氏

<パネリスト>

  • 警察庁 科学警察研究所 法科学第二部長 中村 順氏
  • 総務省消防庁 消防大学校消防研究センター 技術研究部 施設等災害研究室長 天野 久徳氏
  • 文部科学省 科学技術・学術政策局 安全・安心科学技術企画室長 竹内 英氏
  • 国土交通省 総合政策局 技術安全課長 安藤 昇氏
○警察庁(科学警察研究所)の取り組み
爆発物の現場処理技術に関する研究

 爆発物の現場処理技術に関する研究は、国際テロ等に使用される大量の爆薬について、自動車等での大規模野外実験を行うことにより、被害について実験的に明らかにするとともに、被害の推定を可能にし、処理方法、被害の軽減対策に資するものです。具体的には平成19〜20年度に行われ、爆発物の威力を把握し、現場における処理に役立つ技術的データを蓄積しています。平成19年度の実験内容は基準爆薬の爆風圧の計測、小規模自動車爆弾における被害状況の把握、爆処理関連装備品の効果確認で、これらは基準の爆薬との比較で爆速・爆風圧を計測し、高速度カメラで撮影、破片速度も計測しています。同様の計測方法で平成20年度は大規模自動車の被害状況の把握、爆処理関連装備品の効果確認を行い、平成21年度は航空機機体に与える各種 爆弾の影響把握、大形車両の爆弾による破壊状況の確認、各種装備品の効果確認を行っております。
  これらにより、成果としては、手製爆薬、産業爆薬、軍用爆薬による爆風被害状況の把握、各種交通機関における爆弾による被害状況の把握ができました。また、予告での避難の際等、爆発物発見時の避難距離の目安を求めることができました。爆処理等で使用する装備品の効果を確認することができました。
  インターネットで情報があり愉快犯もあるなか、アメリカなどでも屋外実験が行われており情報交換もしております。

○RテロにおけるRN物質探知技術と現場活動支援機材の研究開発

 R(Radiological)テロにおけるRN物質探知技術と現場活動支援機材の研究開発は、世界的なCBRNテロの脅威が高まる中、RN物質を迅速にに探知し、安全に処理処理することが求められています。RN探知技術と現場活動支援機材の研究開発を行うことにより、初動対応機関である警察のRテロ対応能力の向上を行い、「世界一安心・安全な国-日本」の実現に貢献するものです。具体的には平成20〜22年度に行われ、部隊装置としては、テロ現場の放射線量を可搬の小型化しリアルタイムで線量率を測定する装置、中性子イージング装置を開発。個人装置としては、リアルタイム個人被爆線量測定により、無線で後方部隊に知らせることができるように開発。また高線量率中性子・ガンマ線場での使用も想定しております。線量につきましては、1mSv以上の比較的低線量ですと、高槻ヨウ素ばらまき事件。中間が市原イリジウム窃盗事件、1000mSv以下の高線量としては東海村JCO臨界事故があげられます。テロ現場での過度の被爆の可能性は中性子エネルギーが重要となっています。各種線量の評価試験では、核物質からの放射線でも中性子は構成線源が異なるため、現時点では半導体型、過熱液型、OSL型等の2種類の線量計が必要となっています。実験では5台を使用し比較対照しました。22年度からはスーツケース型で実験する計画となっています。

○消防・防災ロボットの研究開発

 消防・防災ロボットは消防隊員に先行して情報を収集し、その情報を基に確かな装備し、安全・確実・効率的に活動するものです。
  消防・防災ロボットの研究開発は、消防隊員の安全確保、負担軽減のための支援ロボット技術を総務省消防庁救急救助課・参事官室が開発し、消防研究センターが技術支援しています。平成15年度に消防・防災ロボット技術のあり方研究会が発足し、ここでの議論を基に16年度は性能検証型を試作、このロボットを基に検討を進め17年度は試験配備型を開発しました。18年度は試験配備型の性能向上を図り、消防本部と協力し配備を前提に検証改良し配備しました。平成19年度以降は技術的フォローアップと実用に即した小改良を行っています。
  このように実用化開発には消防への配備を通じ、実用性・耐環境性等をフィードバックし、研究開発により改良を重ねていく改良サイクルを確立しています。
  具体的には、画像認識追従、操縦負担軽減、群ロボット制御、機器の搬送、SLAM技術、搬収先導、最終的には要救助者自律搬送を目標に研究開発しています。
  想定されるのは、プラント内における漏洩事故、地下街における噴霧災害等の救助活動の支援です。複数の小型ロボットが隊員に自動追従し、隊員が要救助者を発見するとロボットは自律的に要救助者を搬送し、隊員は次の活動に向かうというものです。隊員の肉体的・精神的負担の軽減と隊運用の効率化となります。

○文部科学省におけるテロ対策技術の開発状況

 文部科学省の安全・安心科学技術に関する研究開発の推進方策につきまして、第3期科学技術基本計画を踏まえた基本的な考え方は、安全が誇りとなる国、世界一安全な国・日本を実現する政策目標に、経済的価値のみならず安全・安心な社会の構築への貢献など社会的な価値の創出を目指し、研究開発の成果を通じたイノベーションを実現していくことです。今までの取り組みは、平成20年までの科学技術振興調整費では重要課題解決型等の推進、産学官連携共同研究の推進を行い、違法薬物・危険物質の非開披探知装置の開発、水中セキュリティソナーシステムの開発、テロ対策のための爆発物検出・処理統合システムの開発、化学剤・生物毒素の一斉現場検知法の開発、生物化学テロにおける効果的な除染法の開発があります。戦略創造推進事業(CREST・科学技術振興機構運営費交付金)においては、平成17年度から24年度にかけて先進的統合センシング技術を研究領域として、安全・安心な社会を実現するための先進的統合センシング技術の創出を行っています。このうちテロ対策に関する課題は、セキュリティ用途向け超高感度匂いセンサシステムの開発、全自動モバイル型生物剤センシングシステム、多種類の危険・有毒ガスに対する携帯型高感度ガスセンサシステムの研究開発があります。安全・安心のための先端センサー技術開発費としては、理化学研究所先端技術開発支援センターが有するイオンビーム照射技術およびナノレベルでの分析・加工技術でナノ加工薄膜を用いた高感度毒性ガス検知装置の開発を行いました。
  安全・安心科学技術プロジェクトでは、爆発物・危険物探知分類としてウォークスルー型爆発物探知システム、ミリ波パッシブ撮像装置の開発、NR容器内液体爆発物検知技術の実用化を研究開発し、昨年10月のテロ対策特殊装備展ではこの3件について会場において実証実験を行いました。生物剤の検知分類としては、生物剤検知用バイオセンサーシステムの開発、生物剤リアルタイム検知システムの開発を行い、拡散予測と避難誘導の分類では、有害危険物質の拡散被害予測と減災対策研究を行っています。
  新たな取り組みとしましては、平成22年度新規事業として、安全・安心な社会のための犯罪・テロ対策技術等を実用化するプログラムを科学技術振興調整費として実施し、関係府省の連携体制の下、ユーザーとなる公的機関のニーズに基づいた研究開発により実用化につなげることとしています。

○交通機関におけるテロ対策強化ための次世代検査技術の研究開発

 交通機関の特徴として不特定多数の利用、大量輸送に供し公共性が高い、移動体であることによりテロの対応に困難性があります。このため旅客を装った者による危険物持込防止が有効であり、テロ対策強化のための技術開発への取り組みが必要となってきています。現状では、手荷物検査はX線で透過画像から物質の密度および形状認識が可能ですが、爆薬であるかどうか物質の化学組成の特定は不可能となっています。旅客検査は金属探知で磁性体金属の探知が可能ですが、非金属や非磁性体の武器・爆薬の探知は不可能となっています。爆薬単体及び非金属製の隠匿武器等の探知が課題となっています。
  そこで交通機関のテロ対策強化に資するための次世代型の手荷物検査装置及び旅客検査装置の研究開発を実施し、両検査の迅速化と誤報率の大幅低減、手荷物検査においては、数100gの爆発物を確実に検知し、旅客検査においては、隠匿危険物を確実に検知する基盤技術を実用化に向けて確立することが求められます。一般的に、爆薬にはニトロ基等の窒素が含まれているものが多いため、窒素の原子核がラジオ波に共鳴する性質を利用し、爆薬等の種類を特定する検知が可能となります。窒素の原子核は、核内電荷の偏りにより、0.1〜10MHzのラジオ波を照射されると、同じ周波数のラジオ波を放出する性質、NQR(核四重極共鳴現象)を持ち、この共鳴周波数は分子構造に依存するためにそれぞれの物質で異なることから、共鳴周波数を計測することにより物質の特定が可能となります。ラジオ波を用いた手荷物検査技術の研究開発では、10秒程度で300gのRDX(模擬)爆薬の検知を可能とし、X線の約10分の1という誤報率の大幅低減を達成しました。これは検査の精度向上と迅速化に寄与しております。これによりNQRを用いた爆薬検知が技術的に実現可能であることを実証しております。実用化に向けた技術的課題は、RDX以外の例えばTNT等の爆薬検知技術の開発があり、さらにNQR信号強度の確保等により検知率の向上が挙げられます。このほか実用化に向けた課題としては、次フェーズ研究推進体制、システムとしての利用法・体制、国際的な基準・認証、導入インセンティブ、内外の研究機関・政府機関との連携が挙げられます。このうちシステムとしての利用法・体制では、各種交通モード、公共施設等への展開を想定しての多種検査が必要となってきますし、装置の組み合わせや運用方法、経済性の評価等も重要となっています。

   
 

【総括及び今後の提言】

  • テロ対策のための研究開発連携施策群 主監(政策研究大学院大学教授) 森地 茂氏

 まず、本連携施策群の成果につきましては、各省庁が実施する関連施策の強化として、各省庁がタスクフォース等に参加し、情報の共有化が図られた。警察庁と文部科学省との間で、研究発表をより効果的に推進するとともに成果の積極的な活用を促進するため、平成19年4月3日にはテロ・犯罪対策のための研究開発推進会議が設置されました。
  研究内容の重複排除といたしましては、タスクフォースの場において情報を共有することにより、本連携施策群に位置づけられている施策の内容には重複がなくなりました。
  未対応分野の保管については、タスクフォースの場において、情報を共有することにより関係省庁の施策からもれていた分野を抽出するとともに、補完的課題として対応いたしました。
  また、テロ対策の技術マップ・ロードマップの作成を行いました。20年3月31日には、報告書「テロ対策のための現場探知システム開発の現状と今後の課題について」を作成し関係省庁に配布しました。
  国際協力・連携の強化につきましては、21年4月16日に岸主監補佐による海外調査結果をタスクフォースにて配布し共有化しました。21年10月23日には国際連携セミナーを開催しました。米国とは日米科学技術協力協定により踏み込んだ協力関係を推進中です。機動的な人材育成・確保としては、21年5月27日に社会基盤分野の分野別推進戦略の中間フォローアップにおいて現状の課題・問題点をまとめ、対応方針を作成しました。
  不正な技術流出を防止するための指針策定につきましては、経済産業省において、「安全保障貿易に係る機械技術管理ガイダンス」を大学や研究機関用に策定しました。文部科学省においては、「安全・安心科学技術プロジェクト」委託事業を平成19年より実施し、安全知・技術の共有化の促進をいたしました。内閣府においては、平成19年20年21年の毎年、シンポジウム等を実施しております。
  本連携施策群における関係省庁の各施策は分野別推進戦略における戦略重点科学技術の「2、現場活動を支援し人命救助や被害拡大を阻止する新技術」のうち、有害危険物現場検知技術に該当し、本施策終了後も引き続いて警察庁と文部科学省において実施する施策があります。そのため、当該施策に対しましては、終了後も社会基盤分野PTにおいて、必要に応じ、進捗状況のヒアリング等を実施していきます。
  今後の提言につきましては、4つございます。第1に、少しでも早く今ある技術を社会・国民に還元していくこと。テロ対策技術とは社会・国民に役立つことが最重要であるため、基盤研究・技術開発から実用化・運用の早期実現を目指すことが重要です。10年先の高度な技術を目指すよりも、速やかに実用化できる技術を育てていく。ユーザ側のニーズを踏まえた研究開発の着手と継続的な要望のくみ取りを密に行う。関係機関の連携と社会システム改革による円滑な実証実験の実施とスムーズな政府調達・運用を図ることが肝要です。第2に国際社会と手を結び、世界をリードする技術を育て、売り込んでいく。国内の様々な優れた技術が国内外の安全・安心に貢献できるよう環境の整備を行うため、当該技術に関して関係法令等を整備し、ガイドラインを作成していくことと、その技術の認証基準・検定基準を日本政府により認証していくことが望ましい。米国とは日米科学技術協力協定により踏み込んだ協力関係を推進中です。イギリス・フランスとは、引き続き具体的な科学技術協力を促進していく。第3に推進する技術分野として、まず爆発物・危険物等の検知技術、現場対処技術、犯罪捜査等の支援技術が挙げられます。第4に国際連携を推進する技術分野として、核物質等の検知技術が挙げられます。
  課題といたしましては、タスクフォース等の議論では(1)企業が参画し議論していく体制が整ってない。(2)大学関係者が機密保持のため発表できない。(3)部門別でないため予算がつかない等があります。
  終りになりましたが、この3年間、関係各省庁の関係者の皆様とタスクフォースの研究者の皆様に感謝の意を表して総括とさせていただきます。

   
 

【閉会の辞】

  • 内閣府 大臣官房審議官(科学技術政策担当) 大石 善啓氏

 内閣府大臣官房審議官(科学技術政策担当)大石善啓氏よりこの3年間のタスクフォース研究者らへの感謝の意を含めた閉会の辞があり、発表会はつつがなく閉幕した。