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ホーム >インタビュー・対談トップ >2010年1月10号 安全と安心を提供する、素晴らしい事業、継承

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安全と安心を提供する、素晴らしい事業、継承

「チャレンジネクスト」で品質・次世代技術向上を   ミカミ(社長 三神 裕継氏)
 
 
PTC-EP-RC200:屋外用防爆一体型旋回カメラ
PTC-113+IR-LD518:屋外用小型一体型旋回カメラ(近赤外LED照明器搭載)
PTC-117+WR-LD125:屋外用中型一体型旋回カメラ(白色LED照明器搭載)
 

 電動旋回台やハウジング技術を基本に、特殊光学系、情報カメラシステムの開発から製造、販売、保守サービスまでを行うミカミ(横浜市青葉区荏田西1-5-23、三神裕継社長、TEL045・914・8229)は、創業62周年を迎えたカメラ業界でも老舗企業。メーカー各社との強い信頼関係のもと、自社製品の開発・販売も積極的に行ってきている。2007年9月、その舵取り役として創業者である三神現会長の孫であり、DNAを強く受け継いだ三神裕継社長が就任した。昨今、防犯カメラは犯罪抑止・犯罪捜査の他、社会の安全・安心構築には欠かせない存在となり、市場拡大と共に海外勢を含めメーカーも膨れ上がった。一方で一昨年の米国経済低迷に始まった経済不況は全世界を襲い、日本の市場にも大きな影響を与えた。公共投資削減をはじめ、通常の民間投資の回復も遅れるなか、市場では熾烈な競争が繰り広げられている。こうした厳しい環境下で、新時代に向け“ミカミ丸”をどう舵取りしていくのか業界内外が注目している。


自社を継ぐのは“天命“持続可能な基盤づくりを


―社長就任後、社内、及び市場環境を見た感想は。

  3代目を拝命してから2年余りが経過した現在もその重責は増す一方です。創業者であり、祖父の三神誠・現会長が掲げた「社会に安全と安心を提供する」という経営理念のとおり、素晴らしい事業を受け継ぎました。現在は社会的にもリレーゾーンであり、団塊世代の退職後、中間層が企業の中核となるための世代交代をいかに行うかが、私たちにとっても大きなテーマです。混沌とした経済状況の下で自社を継いだことは自分に課せられた“天命”と受け止め、次世代においても持続可能な基盤づくりを行っていきます。


―今期最も傾注される事業展開は。

  最も力を注ぐのが“品質経営”の実現です。今一度お客様の立場となり、「製品」、「サービス」、「人財育成」において、経営の質を見直します。市場におけるコンプライアンス順守はもちろん、経営層と従業員が価値観を共有するため、経営幹部を対象とした社内研修を始動させました。顧客やユーザーの目線に立った提案・開発ができる人財、また、前後の工程に目配りができる広い視野を持った人財を発掘・育成していきますが、もうひとつの狙いは次世代を担う人財同士が意見交換を繰り広げ、価値観を共有していくための場を設けることです。このほか、「業務プロセスの改善」に取組んでおり、外部の専門家を交えた“品質会議”を定期開催しています。お客様に安心して使って頂ける製品づくりを目的とし、同時に企業としての次世代に向けた基盤づくりを始めています。


「品質会議」から時代に合った企業体質へ


―世代交代に伴い、経営理念の刷新が必要なのでしょうか。

  社長就任に向けては、現会長の創業の思いを継承する事から始めました。それは単なる昔話を聞くに留まらず、終戦直後から近年に至るまでの道のりを祖父と一緒になって辿る作業でした。いつの時代も「お客様のお役に立つこと」を目指した結果、それが会社成長のきっかけとなってきた点では、会長の経営理念の芯の部分は不変のものです。 
一方で市場は常に変化し続けており、この点においても今はリレーゾーンです。社内における品質と、市場で通用するための品質との間に温度差が生じないよう、日々研鑚が必要です。そのため、昨年夏から大手自動車メーカーでQC活動を行ってきた専門家を招き、品質会議を通じた業務プロセスの改善および意識改革に着手しました。現代のニーズに合った企業体質への転換と、品質管理体制の強化が狙いです。


―品質会議の中身は。

  簡潔に表すと、お客様が不満と思われる点に対し、全社が共通の価値観をもって臨むための活動です。常に自分達を客観視するためには自社の物差しではなく、世間の物差しに基準を合わせねばなりません。ともすれば旧来の価値観が先行しがちですが、どうしても打破しなくてはならない課題です。現在は工場を中心に、基本である5Sの見直しから取り組んでいます。
このほか、3ヵ年の「中期計画」の策定・推進によって、業務プロセスを改善します。創業62年間で築いてきた“自社の強み”である開発、設計、生産、販売からメンテナンスまでを含めた一貫体制を客観的に再評価し、私達を支持して下さるお客様に更なる安心をお届けするため、競争力と信頼性に磨きをかけます。同時に、次世代技術に遅れをとらないために、基礎となる要素技術の研究を先行させています。年々、カメラ、レンズともに高精細になり、技術動向に合せたインフラ整備が必要となります。直近では“メガピクセルカメラ”や“HD”搭載の一体型旋回台のリリースに向けた開発を進めています。


将来必要な技術力と人財、パートナー開拓も


―そのための投資は。

  まず、「研究開発者の増員」、並びに「経営資源の集中・効率化」を進めています。現有する人財の適正配置はもちろん、引き続き即戦力の採用にも力を注ぎます。近い将来に向けた開発体制の強化は待ったなしです。その一方で、“ビジネスパートナー”の開拓も重視します。製品開発とは市場ニーズを具現化する作業ですが、ビジネスパートナーとの連携によるスピードアップが欠かせない時代となりました。
実は先代の社長(野村憲一・前社長)より課せられたテーマが“経営にスピード感を与える”ことでした。市場ニーズを収集し、開発からリリースまでの期間をどれだけ短くできるか、クレーム対応も如何にしてスピーディに対応していくかが重要です。当時、60周年を人間の還暦になぞらえ、“社長の若返り”を図ったと同時に“組織の若返り”も期待されました。今後の3ヵ年計画の中で、より明確な“目的別チーム”への再編を進めます。


―具体的には。

  決まった担当者が同じ仕事を繰り返す専任体制から、組織力を高める多能工化へのシフトが必要となります。将来に向けた労働効率の改善は大きな課題です。同時に、視野の広い人財を育成するためにも、経営環境に合せて戦略的な配置転換を行っていきます。私自身も資材部、営業部、技術部と、複数の部署を経て現在に至りますが、自工程の変化のみならず、前後の工程に気を配れる管理職の育成が急務です。社長就任後に多くのお客様や協力会社とのお付き合いを通じ、先輩経営者の方々から教わることは多く、お陰様でこの2年あまりで自社の磨くべき点、正すべき点が見えてきました。


「ミカミ・チャレンジネクスト」策定


  昨年11月に「ミカミ・チャレンジネクスト」という新しいプロジェクトを発表しました。中身は3本柱からなり、一つ目が「次世代を見据えた自社製品の後継機開発」、二つ目が「既存製品の信頼性向上」、そして三つ目が「新分野・新市場への挑戦」です。自社の得意分野はリモコン雲台による防災カメラシステムであり、キヤノンBCTVレンズ販売を通じて培った映像に関連するHDなどの技術ノウハウも強みです。自社後継機開発については市場ニーズを基に、次世代技術の導入や社会インフラの進歩を踏まえたロードマップの策定と実現に伴う開発体制を整えます。また、営業では、既存製品の販売の他、お客様の悩みを解決するため、自社の商材はもちろん、サービス、アイデア等を駆使したソリューション営業の幅を広げていきます。既存製品の信頼性向上についても、昨年に力を入れた一部機種の見直し作業が部署間の協力によって一定の成果を挙げ、今後は主力機種から順に優先順位を決めて水平展開を進めます。
創業時は光学系の特殊機器の開発をはじめ、分野・業界にとらわれずに、様々な事にチャレンジしていました。元来、当社は“開発型企業”であり、お客様が抱える課題に対して一体となって取り組んできた歴史があり、インフラを駆使し原点回帰を目指します。私自身もお客様の声を聞かせて頂くことはもちろん、現場の営業担当はじめ、打ち合わせに臨んだ技術者や、サービス要員一人一人が企業のアンテナ役となり、小さなニーズを聞き逃すことなく捉える事が大切です。また、そうした情報が会社上層部に伝わる体制にしていかねばなりません。
また、既存技術の他分野への転用、更に他分野の最新技術をコア技術へ転用していくための情報収集と併せ、常に多角化へ挑戦していきます。他業界の展示会見学や大学の研究室は新技術、要素技術の宝庫です。そうしたシーズを市場ニーズと結び付ける活動、具体的には産学連携も視野に入れて考えています。


個々の知識を存分に発揮できる提案制度 再始動


―手応えはありますか。

  仕事で培った経験や技術の大半は“暗黙智”として個人に蓄積されます。これを改善提案制度によって存分に発揮してもらいます。過去、定期的に提案委員のメンバーを刷新してきましたが、従業員の熱意に対し会社が充分に応えられず、取り組み姿勢が弱かったため、制度も廃れ気味でした。制度再興に向け思案していた頃、従業員の中から委員に立候補する声が相次ぎ、二年目に入った今は昨年を上回る勢いで提案が寄せられています。課題に直面した場合、普段から些細な事に気づく社員は対応能力が違います。また、女性メンバーが入ることによって細やかな気付きも増えました。昨年は工数削減、品質改善、原価低減、効率化など80件中6割を実現し、年間で150万円もの経費削減効果が得られました。お客様を訪問した際、ちょっとした会話の中で出た悩みやクレームに気づく、生産過程において抱いた僅かな違和感を拾い上げるか否かで、結果は天と地ほどに変わります。


―女性ならではの提案はありますか。

  パートさんが挙げてくれる提案はシンプルながら、経営の観点からも非常に有効な提案があります。因みに報奨制度によって社長賞を獲得したのは女性従業員による提案でした。社内文化としても徐々に根付いてきていると嬉しく思う反面、迅速な評価決裁による運営が重要となります。


白色LED照明器の販売促進、環境配慮に一役


―今最も傾注している技術、又は製品は。

  従来の旋回カメラに搭載する白色LED照明器(写真1)の拡販です。ユーザー施設にとって消費電力の抑止は環境負荷の低減に直結するため、これら環境配慮型製品のアピールによる新たな市場開拓を期待します。


―その他は。

  創業者から念を押された『人は宝である』事を踏まえた「人財」の育成、更に大幅な(設備・人財)投資は難しい今、当社の営業・技術の補完となる“パートナーとの連携・協働”も重要視しています。また、どの業界にも老舗企業がありますが、そこを目指すためには「こだわり」、「他者からの学び」、「挑戦」という共通のキーワードがあるそうです。創業以来、一貫してお客様の利便性を追求してきて“ミカミらしさ”に磨きをかけ、お客様に感動を与えられる製品・サービスを生み出していきたいと思っています。


〈編集後記〉

  明るく、溌剌としながら、誠実さを絵に描いた人柄の三神社長は現在、33歳(1976年生まれ)。学生時代続けた柔道は2段であるほか、中学から大学にかけて写真部に籍を置き、主に日本の原風景を撮り続け、有志による写真展では3日間で400人が来場したとか。富士山や奥穂高岳など山登りも趣味だが、最近は多忙のため足が遠のいている。歴史小説が好きで、「竜馬がゆく」や「三国志」が愛読書。中でも座右の書は司馬遼太郎による長篇歴史小説「坂の上の雲」。ここから、企業の成長に自己の成長を思い描ける社風を目指し、厳しくも、従業員とともに夢を実現するための3カ年計画を策定するヒントになったとか。15年前に出張先で他界した父・聰氏の遺志を継ぎ邁進する。妻のほか、三神現会長夫妻・母との3世代。