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ホーム >インタビュー・対談トップ >2008年トップ >2008年12月25日号 電子タグで要救助者や子どもの位置を正確に把握   広告のお申込はこちらから
 

(インタビュー)瀬崎薫・東京大学空間情報科学研究センター准教授

電子タグで要救助者や子どもの位置を正確に把握
魔法の「電子タグテープ」開発、屋内・地下も可能
東京大学空間情報科学研究センター/国土交通省国土地理院/独立行政法人情報通信研究機構(NICT)/総務省消防庁消防大学校消防研究センター/科学警察研究所

  編集部
 
 

 災害被害や子どもが加害者もしくは被害者となる事件が多発する中、人がどこで何をしているかという情報を正確に得ることの必要性が高まっており、その解決策の一つとして電子タグを利用した測位と安全・安心の確保に関する実証実験が過日、首都圏新都市鉄道等を会場に実証実験が行われた。これは、東京大学空間情報科学研究センター、国土交通省国土地理院、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)、総務省消防庁消防大学校消防研究センター、及び科学警察研究所が、文部科学省科学技術振興調整費「科学技術連携施策群の効果的・効率的な推進」プログラムの一課題として、平成18年度から研究開発プロジェクトを実施してきた結果。そこで、研究内容、実証実験の概要などを研究代表者である瀬崎薫・東京大学空間情報科学研究センター准教授に聞いた。

 
 
 

 ―プロジェクトの経緯・概略は。
瀬崎 平成16年度に政府の総合科学技術会議で「科学技術連携施策群」を定め、その一つに「ユビキタスネットワーク・電子タグ技術等の展開」が選定されました。それに基づき、文部科学省が科学技術振興調整費による委託研究として、平成18年度にプロジェクトを選定し、3カ年計画で実施してきました。研究内容を簡単にいうと、住まいで心臓発作を起こした際、119番通報されても番地や部屋番号までを通報できずに意識を失ってしまうケースが多いと聞きます。そうすると、救援隊が到着しても、GPSの精度の位置情報では、集号住宅などの場合、どの部屋の住人からの救援要請なのか分からず、結果的に救急活動の遅延などから命を落とす可能性も高まります。そこで、GPS技術を補完できる高い精度の位置情報技術が求められています。その解決には赤外線・無線強度を利用した測位などがありますが、これらは専用の受信機や基地局が必要となり、結果、コストが高く消費電力も大きくなるため、利用可能なフィールドが制約され、汎用的なシステムに発展させるのが難しいのは現状です。

  ―先生が取り組まれたプロジェクトの概要は。
瀬崎 電子タグ(ICタグ、RFID)は無線通信回路とアンテナを内蔵し、端末との間で非接触の情報授受ができる小型電子部品で、商品に取付て在庫管理等の自動化に役立つほか、児童が電子タグを持ち歩いて、環境に設置された受信機により居場所を把握する通学路見守りシステムなどに応用されつつあります。そこで、今回のプロジェクトでは、電子タグを使い、平常時利用から防災・防犯まで幅広く役立てる技術の確立を目指しました。
  一つが、電子タグの位置の基準点として環境に安価に設置する手法を開発しました。これは国土地理院が担当しました。二つ目は、基準点から得られた位置情報を端末群が交換しつつ、GPSや加速度センサ、地図データ等他の情報を加味し、これを高精度化する技術を確立しました。これは、我々東京大学が開発しました。そして、三つ目が、以上の技術を使い、災害救助や防犯活動の見守り対象となる子どもの日常行動圏の正確な把握など、国民の安全安心に資する応用システムの開発を目指します。これは、消防研究所、科学警察研究所とNICTです。

  ―実証実験の目的とデモ概要については。
瀬崎 位置情報源である電子タグを設置するインフラ整備技術から、端末の位置精度を向上させ、安全・安心の確保のための具体的なアプリケーションまでを示すことが目的です。そのため、プロジェクトの最終年度が今年で、科学警察研究所による調査を通じて明らかになった児童の日常行動圏の実態も踏まえ、実際の街に電子タグを多数設置して、実証実験を行いました。

  ―ユビキタス関連の電子タグを使った実証実験では、例えば銀座でもありましたが、電子タグに 周辺・環境情報や商品情報を書き込み、訪れた者がPDAや携帯電話などでアクセスする事で、知りたい必要な情報を得るパターンが一般的です。その反対になった理由は。
瀬崎 これまでは電子タグを携帯した児童がどの場所を通過したかなどを知るシステムは沢山ありますが、アンテナ・リーダーがある場所を必ず通るとは言い切れないほか、コストの問題から、リーダーの設置場所が校門だけである場合も多く、児童が犯罪に巻き込まれる可能性が高い登下校の途中の位置が分からないと言う問題がありました。GPSを用いれば、ある程度はカバー出来る範囲が広がるのですが、犯罪者が潜んでいる可能性の高いビル蔭や屋内ではGPSも無力です。そこで、位置の把握が難しい屋内などでは、基準点から割り出した位置の分かった電子タグを配置し、GPSやセンサと電子タグを併用することで、自己の位置を把握できるデモを行いました。そのため、タグからタグまでの間も正確に把握できる「電子タグテープ」というものを開発しました。原理は、電子タグ回路とアンテナを一定の間隔で配置したもので、テープを床や天井などに直線状に貼ることで、定められた位置に効率的に位置情報源を設置できるシステムです。さらに、一個の電池で複数の電子タグに同時に給電可能な工夫を取り入れているため一般の電子タグでは面倒であった電池交換の作業も最小限に抑えることが出来ます。このため、今まで設置が難しかった場所での利用も可能になります。

  ―デモ内容をもう少し詳しくお聞きします。
瀬崎 端末を持った歩行者は、電子タグの近くに来た時に位置情報を直接取得できます。近くに電子タグがない場合は携帯している歩行者用慣性航法ユニットを利用して自律的に位置を把握しますが、その場合、誤差が蓄積していく問題があり、その解決のために他の歩行者とすれ違う際に、それぞれが持つ位置情報を無線で交換して照らし合わせて、存在範囲を絞り込み、お互いに誤差を削減し、位置の精度を高め合う技術を開発しました。この技術を用いることにより、電子タグを設置する密度が低い場合でも、高い精度の位置情報を得ること出来ます。また、火災や救援要請通報には正確な発信位置の特定が不可欠ですが、携帯電話からの発信については基地局測位、あるいはGPS測位による位置情報通知システムの導入が、平成19年4月から始まりました。しかし、階数の情報が必要な集合住宅や地下空間などでは従来の測位技術では精度が不十分な場合がありました。そこで、今回のプロジェクトでは部屋に設置した電子タグが発する位置信号を携帯電話端末が直接受信して、発信位置情報を伴った救援要請通報を可能にするプロトタイプシステムを開発しました。実際の実証実験では300MHZ帯と2・45GHZ帯の電波を使用する2種類の電子タグをそれぞれ受信できる携帯電話端末を用いて、ガード下の自由通路などGPS測位が難しい場所での位置情報の取得と緊急通報も可能な事を実証しました。

 
瀬崎 薫氏
電子タグテープ