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ホーム >インタビュー・対談トップ >2008年トップ >2008年11月25日号「新宿に新ランドマーク「COCOONタワー」誕生」   広告のお申込はこちらから
 

(インタビュー)「学校法人モード学園 青木稔理事 丹下都市建築設計 渡辺均チーフアソシエイト」

新宿に新ランドマーク「COCOONタワー」誕生
オイルダンパー等の耐震構造 防犯対策はゾーン管理、他
ビル警備・管理は綜警グループで

  編集部
 
 

 服飾をはじめ、コンピュータ、医療福祉の3分野の専修学校を展開する学校法人モード学園(東京都新宿区西新宿1‐7‐3、03・3344・6000)は、国内では東京、大阪、名古屋の3カ所に校舎を構える。こうした中、東京校の老朽化と分野拡大のため建設中であった総合校舎「モード学園コクーンタワー」が11月4日に竣工、6日グランドオープンした。
  新宿の新たなランドマークタワーとして、まず目に止まるのが斬新なフォルム。ずばり、「繭=COCOON(コクーン)」で総事業費は数百億円。
  設計は丹下都市建築設計(東京都新宿区大京町24、03・3357・1888)、施工が清水建設。鉄骨造り、一部鉄骨鉄筋コンクリート造り地下4階・地上50階・塔屋2階。敷地面積約5172平方メートル、延べ床面積8万903平方b。内部には、専修学校、店舗、ホール、駐車場、など。
  そこで、ビルの全貌をモード学園の青木稔・理事(法人本部学務室)、また設計を担当した丹下都市建築設計の渡辺均チーフアソシエイトにインタビューした。

 
 
 

―外観が目を引きますが、計画では生徒数は1万人規模と聞きます。
青木 現行の東京モード学園の生徒数は1500名、IT専門学校「HAL東京」と、医療・福祉からスポーツまでを教える「首都医校」の2校が許認可を得て来年の4月に開校しますと、平成20年には約3000名、23年頃には1万名規模と予定しています。

―3校の生徒数の比率は。
青木 中心になる分野から言うと、首都医校の医療・福祉系が大きな規模を占めると想定しています。

―元々の発祥はファッションですね。
青木 そうです。元は名古屋モード学園の名の通り、名古屋でスタートし、その後、大阪、東京にも進出し定着してきました。ファッションのパイオニアで、新しい生き方を御提案してきたと自負しております。しかし、時代の要請を研究・分析することで、ファッションの次はITコンテンツ、続いて医療・福祉分野に到達しました。産業界から求められるものを教育の範囲で追加、又は淘汰していくことは当然です。

―形(外観)と言い、ネーミングといい、全く今までにない斬新な手法を取り入れられていますが。
青木 国内外150社程の設計会社でコンペティション(建築設計競争)を行い、当社の学長、理事長など役員全てが投票したのが、丹下都市建築設計さんが提案して頂いた設計・デザインでした。これからの新しい学生を創出するための校舎に相応しく、デザインも斬新、名前も「コクーンタワー」と敢えてネーミングして頂きました。
渡辺 モード学園さんの発祥は服飾デザインであり、ファッションに関係する繭(=生糸)をモチーフ(動機・主題)としてデザインしました。従来の超高層ビルは真っすぐに聳え立つ建物で、経済性・効率性や耐震設計等の条件を当時の最新のコンピュータを駆使して創造したものです。普通にはないデザインや斬新さを持った設計等で評価頂き、完成に至りました。


―構造の重心で考えると、立方体や台形の方が、振動等に強く安定すると思いますが。
渡辺 超高層ビルの場合、足元で言うと圧迫感とか威圧感を感じるのが普通です。今回、当社が御提案したコクーン型は地面部分が広くとれたのが一つの特長で、また環境面等も重視されているだけに緑化部分が増やせるほか、都心部だけに空を見上げた場合、空がよく見えることも重要なファクターとして御提案しました。更に、今回の高層ビルではヘリコプターの離発着ができる様、天井部分のある一部を開閉式屋根にしたフォバーリングスペース(開閉式緊急救助用スペース)・構造になっています。

―サンダーバードみたいですね。

渡辺 まさにそうです。東京消防庁の航空消防隊をはじめ、色々な関係者と協議させて頂き、建物のデザインコンセプトを理解頂くと共に、技術面、安全面でも認可頂きました。

―建築法等では、何メートル以上の建物でフォバーリングスペースやヘリポート設置が義務付けられているのですか。
渡辺 東京消防庁さんによると、100M、150M、200Mのモデルで幾つかの設定があり、現時点では150Mを超えた場合は義務付けとなります。今回、御提案したコクーンビル(203・65M)は、当然ヘリポートの設置が必要です。しかし、新宿の場合、超高層ビルが林立しているため、全てが必要と言うわけではなく、災害等の際、屋上にヘリコプターが救助にきた場合、何人救助できるかではなく、救助する隊員が下りられるスペースの確保が前提で、こうしたフォバーリングスペースなどの設置が認められた訳です。

―都内には沢山の超高層ビルが林立していますが、今回のような屋上が開閉する構造を持つビルは初めてですか。
渡辺 現在、当社がお聞きしている範囲ではコクーンビル以外は東京都内はもとより、全国的に見ても余りないと思われます。
青木 当ビルは学校という施設の機能や設置場所などを考え、立体的に色々な方が出入りする動線を初めから想定しました。本館がコクーンタワー=A横には多目的な用途に使えるコクーンホール≠ェあり、その間を人が自由に抜けられます。というのも、ビジネスマンをはじめ、学生など多くの人が行き来するエリアに建てた施設だけに、周辺の他の施設に行くのが目的でも、当校が邪魔になりわざわざ遠回りをしなくても当校の通路を通り抜けて頂くことで近道となります。また、災害などの緊急時が発生した時は、近隣の方々を収容できるスペースとしても申請しています。更に、お隣の新宿エルタワーとも地下(2階)通路で来年3月頃にはつながる計画です。
渡辺 新宿には地下、地上、及びデッキレベルの動線がある中、この建物は好立地で中央通りの地下道通りに面しておりまして、そこから出入りし、建物内間通路で上下を結ぶ縦方向にはサンクンガーデン≠ニ言う吹き抜けで地下に太陽光を落とす役割のほか、上下の動線を含めた歩行者環境の向上という利便性をも計画しました。その一つが、お隣の新宿エルタワーと地下で接続できる様な地下道も設置しています。

―同様な構造というか、考え方として丸の内エリアには「大・丸・有」(大手町・丸の内・有楽町)がありますね。
渡辺 「大丸有」はあのエリア自体でまちづくりしていますが、ここ新宿は、淀橋浄水場(東京都水道局東村山浄水管理事務所淀橋浄水場)跡地に1970年代から高層ビルが建つ中、当時は、環境・共生といった概念がなく、自由に建設しました。しかし、現在ではその新宿の見直しを進めており、今回、このビルを建設するに当たり、東京都の都市計画の御担当者の方々に相談しながら、企業でなく学校という特殊性から地域貢献のほか、周辺の方の利便性向上を含めた高層ビル+学校を計画しました。

―都庁舎を含めた構想ですか。
渡辺 小泉内閣時代の都市再生緊急特別法という時限立法の中で、都市再生特別地区という都市計画の手法があり、それを採用して東京都の都市計画決定を頂いております。その中には地下の通路やホール、ギャラリーカフェなどの交流施設などを総合的に含めて容積を出して頂きました。
青木 防災備蓄倉庫なども盛り込まれています。
渡辺 これは地下の駐車場で、車のアクセスがし易い所に、新宿区に無償賃貸借する100u程の非常用のスペースです。もう一つ、コクーンホールについては、災害時での帰宅困難者の受け入れ対応ができ、ホール2層(Aホール・Bホール)で計1000人が椅子に座って一時休養ができます。


―今の時代、私有地に自社ビルを建てる場合でも、災害時など周辺との共生が可能な仕組みが必要ですね。
青木 そうです。特に我々は教育機関であり、折角、これだけのランドマークを建てた事は、それだけの意義を持たせなくてはいけないという発想に我々も共鳴しました。
コクーンホール自体、機能の85%程を通常の授業で活用しますが、立地が最良だけに、授業以外の夜間や休・祝祭   日にも何か催事に使う事を計画していく予定です。また、当校の卒業生の(作品発表の場など)活動の場など、まさに文化交流の場として時間外対応も計画しております。
渡辺 そのお話を頂いた時、学校で利用できるのは全体では50%を切るくらいです。学校が休校となる土日や祝祭日などで有効活用できる様、御提案させて頂いた結果、モード学園さんに快くご理解頂きました。


―最近ではビルでの環境、例えば照明や空調などの省エネが注目されていますが、いかがですか。
渡辺 学校の場合、カリキュラムが決まっており、その都度、照明や空調は敢えて入り切りできるようにしています。このほか、トイレや避難階段には全て人感センサ―を採用しており、人が入ると作動します。そのほか、省エネでは人感センサ―などのマクロ的なシステムのほか、エネルギー効率の高い熱源効率システムであるDHC(District HeatingandCooling):地域冷暖房施設から熱供給を受け、かつ当ビルで使う電気のマックスの半分くらいを自家発電できるようコ・ジェネレーションシステムを取り入れています。これは建物で使う電気は使い切れますが、排熱や蒸気などは使えないため、お隣の新宿エルタワーの地域冷暖房施設と連携し、エネルギー変換効率を、例えば100のものを電気に変える場合、発電所でも効率は20〜30%、コ・ジェネレーションでも30〜40%ですが、そうした排熱利用や蒸気再利用することにより70〜80%に熱変換効率を持つことができるため、こうしたものを地域性、立地や学校という運用形態など含め採用し、省エネ化を図っています。

―太陽光発電は。
渡辺 周辺にビルがある場合、反射光が光公害≠ニしてご迷惑をかける場合もあり、採用しませんでした。また、コクーンタワーという、目立つビルだから眩しいという風評がたつのも、正直、設計者の立場で言うと寂しいものがあります。それ以外の部分、例えばダブルスキンやブラインドの設置など、在来的な積み重ねで全体の省エネルギー化は図っております。
青木 我々が丹下設計さんに強くお願いしたのが、
3つの学校(モード、HAL、医療・福祉)の教育の仕方の違いです。例えば、HALはコンピュータを使い、モードはアイロンなど熱源を使う機器、更に医療・福祉関係は特殊機器や部屋の冷却化等も必要です。また、構造上、高さがあるだけに階・教室毎の温度差をどう解決するか、不安もありましたが、丹下設計さんは見事クリアーして頂きました。
渡辺 一般的にはフロア毎で空調調整する事が多いのですが、テナントが多く入る場合は別として学校機能等の場合、例えば医療・福祉系の授業では上着を脱ぐと寒く、隣の教室では熱い事態も出てくるかもしれません。かといって、全ての教室を冷房又は暖房で統一するのは効率が良くなく、ゾーニング毎で空調を切り換えるシステムを取り入れました。


―自動ですか。手動ですか。

渡辺 手動式です。というのも、自動は効率が良いかというと、実は余り効率よくなく、ここでは教室を使う場合、先生並びに生徒さんがいる事もあり、教室を運営する上で手伝うのも生徒さんの役割の一つと聞いており、人が照明や温度管理を行うのがベストと考えました。但し、空調管理においては生徒さんが簡単に触れない様にしたほか、ブラインドも3段階(全閉、45度、水平)調整が出来るようにしました。
青木 我々使う側から言うと、マニュアルによる簡素化、例えば3段階の切り換えとか、空調変換する場合の操作位置の指定があり、教師や管理者はもちろん、学生でも簡単に運用できると思います。授業の始まる前に照明を点け、終われば消灯するほか、鍵も掛けるといった、当たり前のルールに則った運用を旧学校でも指導してきており、決して難しいことではありません。ビル全体の運用などは管理会社に委託しますが、通常の運用については学生自らが責任を持って行わせます。


―超高層ビルだけに免震・耐震はいかがですか。
渡辺 超高層ビルですから、当然構造評定については大臣認定を受けた建物です。当社では東京都庁なども手掛けており、同等な耐震設計を取り入れております。更に、昔の高層ビルは地震や強風などの場合、敢えて揺れることで力を逃がしましたが、最近はコンピュータによる解析技術が発達しており、耐震性能プラス居住性を重視した、12本のCFT(コンクリート充填鋼管)柱を用いたラーメン・フレームを配置したほか、15〜39階のコアに「オイルダンパー」を配置して減衰力を付加できる技術を導入しました。今回導入しました構造システムにより、国内で発生した従来規模の地震では倒壊しないだけの構造設計です。

―火災対策はいかがですか。超高層では現存の消防車でも届かないと思いますが。
渡辺 このクラスになると、都庁庁舎などと同様、火災の際、消防車で消火する段階にはありません。避難安全検証法≠ニいう大臣認定による超高層ビルでの安全性も保っています。まず、(財)日本建築センターに避難安全検証法の評定を出し、最終的に国土交通大臣の認定を取る建物として、火災の際、スプリンクラー等の消火システムはもちろん、特に適材適所の排煙システムのシミュレーションによる安全対策が導入されています。また、当コクーンタワーは特殊な構造から、廊下が丸く囲っており、2個の特別避難階段は同時にバリアフリー認定を受ける構造でもあるため、通常の建物階段よりも段が低く、一般の避難階段よりもゆったり上がり降りができる仕組みになっております。
一方、層毎で上板延焼を防止する構造になっており、火災発生後、当階はもちろん、上下の階でも十分避難できるだけの距離・人口密度をシミュレーションした構造を導入しています。とはいっても、日頃の火災訓練等も必要で、要は他の一般ビルなどより、火災対策でもかなり安全な構造になっています。
例えば、スモーラー≠ニいう吹き抜けで、火災の際の煙を最上階で蓄煙することで、避難時間を稼ぎ、より安全に避難できる仕組みも取り入れています。

―安全面でいうと人の出入り管理も重要ですがいかがですか。
青木 先程お話いたしました外部の方が素通りできる通路がある一方、建物内にはが学生や職員など関係者以外は入室できない構造になっています。

―どんなシステムですか。
青木 入口毎で必ずチェックを行い、部外者をシャットアウトします。また、入口をはじめ、施設内には相当数の監視カメラを導入し、防災センターで集中監視するほか、一般管理についても同じくセンターのモニターで監視できます。

―学生など学校関係者はICカード等を携えるのですか。
青木 基本的に一階のエントランスホールでは来客や学校案内で来校して頂く方のみが訪れるエントランスで、受付も3人体制で応対させて頂きます。天井には2カ所から監視カメラでも入退室をチェックします。また、学生は2階にあるエントランスからのみから入室でき、受付には職員を配置するほか、同様な監視カメラでチェックも行うセキュリティシステムを採用しています。
渡辺 つまり、このタワーは「層」と「ゾーン」で人の流れをコントロールします。一階はお客様、2階が学生のみ、更に店舗へは地下からのみといった「エリア」、「ゾーン」でセキュリティ性を高めています。


―SUICA等のICカードを導入する予定はいかがですか。
青木 大学は門や出入り口が沢山あり、人の管理をする際、どうしても機械に頼らないと難しい面がるため、結局、ICカードなどで管理する事になります。当校も建設に当たっては丹下設計さんに同様なシステムの検討もお願いしましたが、先ほどお話しした構造で、十分、セキュリティ性は確保できるということで現在のシステムになりました。学生であれば新入生は別に、教室などを覚えた時点で迷いませんから、フラフラする挙動不審な行動は取らない事で、反対に一般部外者が入ってきた時点ですぐ判別できます。結局、現時点では盤石な体制で人的管理が可能になっています。
ただ、セキュリティ面のほか、出席・在籍管理面でアナログにはない、カードによる管理などは実は現在も検討しています。今後、課題などが出てきた時点では再度検討していく方針です。


―コクーンビルの警備、及びビル管理はどこの企業が受け持つのですか。
渡辺 警備会社は綜合警備保障、ビル管理もグループの綜警ビルサービス です。
青木 警備とビル管理が一体化しており、365日ずっと安全対策を行って頂きます。そのため、我々職員といえども、「ストラップ」と「徽章」がないと、祭日や夜間などは入室できません。


―綜警グループさんに決まった訳は。
渡辺 特殊な建物でのビル警備でのノウハウがあるか。また、人が集められるかが重要で、警備会社に限らず、ビルメンテナンス会社など幾つかの企業から御提案を頂き、モード学園さんの方で色々な観点から判断され決定されました。
青木 一番のネックは、日常の清掃やビル管理を含めた管理会社、及び警備会社は通常、別会社に委託するケースが多いのですが、これだけ大規模なビルですと、一体化しないと運用が難しいと思います。そこで、綜警グループで全て出来るという事で決定しました。

 
モード学園 青木稔理事
丹下都市建築設計
渡辺均チーフアソシエイト