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2010年6月10日号 ユーザー団体と連携推進 JEAS平成22年度通常総会

ユーザー団体と連携推進 JEAS平成22年度通常総会

 
  −日本EAS機器協議会−
JEAS山村会長
警視庁山下生活安全部長
セキュリティフォーラム
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(2010年6月10日号)

 日本EAS機器協議会(東京都新宿区、山村秀彦会長、以下JEAS)は、1日に東京・アルカディア市ヶ谷で平成22年度通常総会を開催した。
  通常総会に先立ち、山村会長が挨拶。「警察庁の統計によりますと、我が国の万引犯罪の認知件数は、平成4年の6万6852件から平成16年の15万8020件まで、実に2.4倍と急激に拡大して参りました。平成17年から減少に転じ、平成19年には14万1915件とピークの平成16年度より10%減少しました。ところが平成20年度から増加に転じ、平成21年には14万9892件と5.6%増加。東京都で見ると、平成21年は1万9955件と平成16年度比で、実に29.7%増加しました。小売業の現場では、青少年や65才以上の高齢者の万引きが増加。大量万引き、外国人などの計画的犯罪、換金目的による万引き等々、犯罪内容も激しくなっているのが現状です。万引き犯罪を小売業の収益管理という側面だけでなく、地域の青少年健全育成や安全安心なまちづくりという社会的な責任から万引犯罪を起こさせない取り組みは、売り場を提供する小売業や商材メーカーを含めた各々のメーカーに求められてきていると思っています。警視庁では昨年、万引きはその後の犯罪の入口になるとの認識から、約千人を対象に意識調査を行いました。更に万引き犯罪全件届出制度をスタート、関連諸団体を組織化した東京万引き防止官民合同会議を立ち上げ、万引き犯罪撲滅に取り組んでいるとのことで、大変心強い活動だと存じます。防犯の社会的インフラとして、益々重要性を増していますEAS機器と埋め込み型医療機器との共生についても、安心してお買い物をして頂けるよう、EAS機器の所在を明示したEASステッカーやEASポップの添付や啓蒙も引き続き邁進します。今後も万引犯罪撲滅の唯一のソリューション団体として、健全で安全な店舗運営のお手伝いや、地域社会の安全安心は万引きからをキャッチフレーズに鋭意努力してまいりたいと思います」と語った。
  続く総会では、第1号議案の平成21年度事業報告、収支決算、第2号議案の今年度組織、人事、第3号議案の今年度事業計画、収支予算案が報告され承認された。今年度事業として、「万引犯罪防止対策会議」の場などでユーザー団体等との連携強化を進める他、業界を絞ってソースタギングの実験等を推進予定。人事では山村会長、三宅正光副会長、土岐知則副会長が、今年度から任期2年で再任。理事としてチェックポイントシステムジャパンの希代清輔氏、タカヤの田丸典億氏が就任。監事にジーネットの那谷幸平氏が加わった。
  総会終了後、シンポジウムを開催。
  警視庁の山下史雄生活安全部長が、「東京都内における万引きの現状と防止対策について」と題して講演。
  昨年春から、警視庁として本格的に万引きという問題に光を当て、関係各方面の協力によって、「万引き撲滅に取り組んでいくことこそが、首都東京の将来の治安を下支えする」との考え方に基づいて、取り組んでいると挨拶。
  昨年から今年にかけて、今現在取り組んでいる万引きの対策、万引き被害の現状について紹介した。
  平成14年に都内の刑法犯認知件数がピークに達した。犯罪減少への取り組みとして、平成15年以降、警視庁では街頭における様々な犯罪、侵入者対策など犯罪抑止総合対策に取り組んでいる。平成14年は都内の犯罪総数が30万件を超えていたが、昨年は20万件程度で、ピーク時の2/3に減少。昨年の数字は、世界で日本が最も安全な国と言われた昭和40年代の平均を上回った。特に空き巣等の侵入盗犯罪が、最も多い時期の1/5程度で、数値的には都内の犯罪は減ってきた。警視庁では昨年3月から更に取り組みを推進。大きなテーマとして、社会におけるルールやマナーを守る規範意識が非常に低下しており、それが各方面に悪影響を及ぼしているため、こうした点にしっかりと光を当てることになった。万引きの問題は、これを象徴的に表わす現象だと考えられる。万引きは初発型の犯罪であり、少年の場合はまずは万引きをして、それに慣れて上手くいくとエスカレートすると言われる。たかが万引きと言われることが多いが、きちんと対処しないと将来東京の治安に甚大な悪影響を及ぼすという問題意識で取り組みを開始した。
  数値的には昨年の万引き認知件数が、1万9955件と過去最多の数字となっている。一方、全刑法犯の認知件数は、平成14年をピークにどんどん減っている。犯罪全体が減る中で、万引きが増えている、あるいは高止まりしており、犯罪全体における万引きの割合は、昨年が9.7%で、平成10年の2.7%から上昇。都内の犯罪全体に占めている万引きの量的なボリュームは、どんどん大きくなってきている。注目すべきは、昔は万引きは少年特有の犯罪と言われ、平成元年には万引きで検挙・補導した2人に1人は少年だった。昨今では、少年の割合が減る一方、顕著なのが高齢者の割合がどんどん増えていることである。高齢者は数も増えているが、この十年間で9.3倍(336人から3110人)になった。もはや万引きは少年特有の犯罪と言うより、どの世代にも見られる犯罪。昨年、一昨年の数字を見ても、少年より大人が多くなっている。万引き少年の学職別検挙・補導人員を見ると、以前は高校生が多かったが、中学生が平成20年に高校生を逆転。昨年は更にその差が開いている。昨年、中学生は2060人で、前年比52・6%増。小学生も同様の傾向。小学生・中学生の早い段階から、万引きの問題は顕著に表れている点は注意が必要。
  従来型に加え、悪質な万引き事案が見られる。化粧品や下着、書籍を大量に万引きする売却目的と思われる事案がかなり目立ってきている。商品に付くタグを切断、家族連れでショッピングカートごと盗む事案がある。「かごダッシュ」は、非行少年の間などで使われる言葉で、買い物かごに山のようにつめて、一気にダッシュして逃げる手口なども見られる。警視庁で検挙した事例で、革のジャケットを12着万引き。防犯タグが付いていたが、タグを付けたまま大きなバッグに入れて、肩に担いでセンサゲートの上を通していた。少年の供述で、センサは胸の高さくらいまでしか反応しないと友人に聞いて知っていたので、上に持ち上げて持ち出した少年2人による犯行であった。古着屋に大量に持ち込まれたが、店側が不審に感じて警察に通報があり発覚しました。
  万引きは案数が多いため、被害額については推測の域を出ないが、万防機構などの協力を得て、年間約670億円と算出。万引きの場合、警察官が積極的に捕まえるケースは余りなく、店側からの申告、特に犯人を捕まえたという通報と同時に被害届を出されるケースが多い。いつ被害にあったかわからないケースもあり、犯人を捕まえても店側から全て届出がある訳ではなかった。
  警視庁では数字は把握していたが、万引きの背景にどういったことがあるのか、何で万引きは増えているのか、万引犯は何を考えているのかについて、十分な光を当ててこなかった反省がある。それを探るためには、きちんと調査をして、専門家に分析してもらう必要がある。
  そこで、桜美林大学の桜井昭弘教授にご指導を頂き、「万引きをしない・させない」社会環境作りと規範意識の醸成に関する調査研究委員会を昨年の7月に設置。また、4月から6月にかけて特別調査を実施。世代によってかなり状況は違うが、少年の万引きの特徴は「ゲーム感覚」、スリルを味わうこと。捕まるとは思っていなかった、運が悪かったと思っているようだ。併せて少年の場合には共犯が多く、背景には先輩や友人から万引きに誘われたケースが3割程度ある。再犯者の中には、売却目的で計画的な犯行に及ぶ悪質な者も見られる。最初はスーパーのお菓子だったが、成功するうちに品物が代わり、高額になっていくことが顕著に見られる。成人の背景としては、「孤独」「むしゃくしゃしていた」という点が見て取れる。ほぼ3人に1人は、過去にも万引きをしていた。再犯者の中に売却目的が見られる点は、少年と同じような状況。過去の経験で捕まった際に、当人が思うほどペナルティがなかったことで、万引きをしてもどうということはないという甘い認識で、万引きへのハードルが低くなっている傾向が見受けられる。高齢者においては、「孤独」「困窮」「生き甲斐のなさ」が顕著に見て取れる。高齢者の万引き被疑者の10人に9人までが、友だちがいないか少ない。話し相手や交流する相手が非常に少なく、独居が4割という数字もあった。高齢者も3人に1人が万引きの犯歴を有していた。少年、成人と違うのは、初犯者と再犯者に大きな変化がない点。スーパーなどで比較的低額な食料品を繰り返し万引きするのが、高齢者の万引きパターン。店舗調査をしたところ、全件警察に通報、事案に応じて通報する店舗と対応はバラバラまちまちです。理由は警察での事件処理に非常に時間がかかるからです。これはお店の皆さんに大きな負担になっているとの声があった。通常3〜4時間、しかも警察署に出向いて、往復の時間や手間で下手をすれば一日がかりである。それぞれの被疑者の背景とともに、小売店舗では大変大きな被害が生じていて、警察に届けたくても負担が重いという実態が明らかになったところ。まずは小売店舗の全件届出が不可欠。届出をしなければ、全体の実態がわからない。届出をしないということは、いずれ見付かってもお金を払えばそれで終わり。万引き、犯罪をしたことが何一つペナルティとして本人にはね返らない。それが再犯のハードルを低くしている。全件届出のためには、警察の手続きを簡素化、迅速化するべきとのご提言を頂いている。これが今の警視庁の万引き防止対策の一番の核の部分である。
  昨年9月に策定した「万引き防止のためのアクションプログラム」には、基本的考え方は(1)警察のみならず、行政、小売店舗、家庭、学校、地域住民、民間ボランティア、関係団体等社会をあげた総合的な取り組みとすること(2)万引きにおける「規範意識の向上」を図るために、「社会における絆づくり」等に取り組み、万引きをさせない社会環境をつくること(3)万引き防止対策を将来にわたる持続的な取り組みとし、それにより「安全・安心な街、東京」の実現に寄与することです。
  万引き防止官民合同会議を一つの推進母体として、警察署レベルでは万引き防止連絡会で取り組んでいく。捕まえることより、万引きをさせないことが大事という考え方です。させないためには、社会の構成主体が各々できることを行う。警察は防止の関連では、制服警察官の警戒や情報発信、被害品の流通防止対策。お店は万引きをしにくい店舗作り、そして万引き防止教育、随分進んでいるが地域ぐるみで対策による機運作りが、万引きをさせない環境作りになるだろうと思う。万引きをした人には、二度とさせないための感銘力のある措置をする。
  全件届出に対して、昨年の夏から秋頃にかけて、警察で万引きの被害届出を受ける際、関係団体と協議の上で作成している調査書類の簡素化を実施。従来はお店の方に警察、交番に来て頂きましたが、原則として警察官がお店に赴いて手続きを行うことにした。小売業界17団体に対して、是非全件届出をして欲しいという要請をした。効果は半年間で届出が19・9%、約二割増。社会全体の万引き防止のメッセージは、都、地域レベルでもかなり発信している。これにより、万引き防止対策が色々な所で取り上げられることで、抑止効果、メッセージ効果も相当出ていると思う。対策は緒に就いたところという認識だが、書類作成時間は確実に短縮されている。もっと短くできると思っており、是非1時間を目指して作業したいと考えているところである。
  東京万引き防止官民合同会議が、昨年12月2日に開催され、参画いただいた合計35の関係団体があった。これだけ大きな被害が出ている大きな経済問題、社会問題という認識で取り組んでいる。そして「万引きをしない させない 見逃さない」共同宣言は、先程申し上げましたアクションプログラムと同じ考え方である。万引きは絶対に許さないと言う機運を高めるメッセージを発信し続けることが、非常に大事なことだと申し合わせた。各警察署で「万引き防止連絡会」を設置しており、全ての警察署で設置している。メッセージの発信が大事であるため、キャンペーンを実施。広報啓発活動も行っている。
  警視庁、東京都治安対策本部、東京都教育庁の三者でワーキングチームを設置。学校教育の道徳倫理の授業の中で、万引きをやってはいけないと先生に語って頂き、実際に子どもたちに考えてもらうことが大事であると考え、7月に教材を都内の全学校に配布できる予定となっている。3月に新中学一年生の保護者を対象に、リーフレットを十万枚作成して、各警察署から各学校に持ち込ませて頂き配布した。万引きをした少年、保護者に対しては、「二度と万引きをしてはならない」とのメッセージを送るため、どの警察署の取り扱いでも警視庁管内なら、ある種共通の訓戒メッセージを発するためCDを作成。基本的に万引きで補導された少年に万引きは犯罪であること、ルール、決まりを守ることの大切さを説き、自分を大切にするためにも万引きは二度としてはならないと聞いて貰っている。
  高齢者の場合、「孤独」・「生き甲斐のなさ」をどう埋めるべきなのかは、対策として難しい部分。高齢者及び高齢者を支える人たちを対象とした啓発活動を進めるための自治体と連携したモデル地区事業等もやっていきたい。少年に比べて対策のメニューが難しい。老人クラブなどお年寄りが集まる会合で、万引き防止を呼びかける取り組みも行っている。こうした場所に出られない方に万引き問題について、どうアプローチをしていくかが今後の課題。再犯を繰り返すものに対しては、地域における清掃活動や環境美化活動といった、社会奉仕活動への参加によって、社会との絆を作らせることこそが、再犯防止になるのではとのご提言を頂いている。こうした取り組みも今後考えていかなければいけないと思っている。
  本来、治安問題の根本は、人々が身近に触れる治安を乱す事象に対して、どれだけ自省的であるか、あるいは、どれだけ批判的であるかにある。その意味からも、首都東京の治安回復をより確実なものとするために、万引き防止対策にしっかりと取り組む必要がある。取り組みを弱めれば、治安が悪化していくことが危惧される。これは前警視総監が部内の会議で説明したことだが、我々はこうした考えで取り組んでいるところである。